竹橋から

落語に「ねずみ」という演目がある。
左甚五郎が旅先の旅籠でこしらえた木彫のねずみを店先に出しておいたところ、これが動くというので評判になり、貧乏旅籠に客が押し寄せてくる、というような筋だ。
この噺に限らず、落語の中の甚五郎は、超絶的な技巧をもって木彫に生命を吹き込む、ほとんど神話的な存在である。
さて、高村光雲による動物の木彫を見ていて、これと甚五郎の世界とは地続きではないか、と思った。
落語の甚五郎話は、どこまでが本当のことかよくわからないけれど、例えば光雲の「兎」を見ていると、耳の長短はさて措き、旅籠の店先に集まる江戸の人々の感興もこんなふうだったのかなと思いが至る。

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