お江戸日本橋亭の「雷蔵八百夜」に行ってきた。
春雨や雷蔵師が800回を目標に毎月続けている独演会で、これが第224回。
実は、ぼくは八百夜に行くのが初めてなら、ここお江戸日本橋亭も初めて。
この前、新宿末広亭の10月中席昼の部を覗いたら、雷蔵師の師匠である先代雷門助六追善の寄席踊りをしていて、そこに当代の助六師らと共に雷蔵師も出演していた。そんなことで、雷門一門に興味をもつようになって、この会も覗いてみようと思った次第。
お江戸日本橋亭は、地下鉄の三越前が最寄駅と思っていたら、改めて地図を見ると、JRの新日本橋駅からも近い。新日本橋駅だったら、錦糸町から総武線快速に乗ればいいから、そのほうがこちらには都合がいい。
駅を出て程なく日本橋亭を見つけると、入り口で券を売っているおじさん、どこかで見たことがあるなと思ったら、雷蔵師本人ではないですか。ご本人の出番はもう少し後だから、それまでは裏方の仕事(ある意味表の仕事だが)もしてようということか。
ちょうどいい頃合で、中に入ると開口一番、橘ノ円門下、橘ノ冨多葉さんの出番が始まるところ。見回すと、客は年寄りばかり。そんなものか。
冨多葉さんは、丸顔の福福しい噺家さん。なにやら先月に胆石で2週間ばかり入院したということで、その話を枕に、病人はえてして自分の体験談を他人に知ったかぶりする、ということで、知ったかぶりの噺「転失気」に入る。
続いて春風亭柳之助さんが「竹の水仙」を。自分が武蔵丸、あるいは西郷さんに似ているということから相撲関係の小ネタを挟む。
さあ、ここで春雨や雷蔵師匠の登場。つい昨日、神津島から船で帰ってきたばかり、今でも高座の上で体が揺れているよう、だとか。ネタは「小間物屋政談」。
休憩の後、今度は「馬の田楽」。
ひょっとして、最初のほうはまだ本調子でなかったのかなとも思う。「小間物屋・・・」では不自然につっかえるような箇所もあった。あと、小間物屋の小四郎の女房が、なんかおばちゃんぽく聞こえるのね。が、休憩後の「馬の田楽」はいいリズム。全篇に流れる田舎言葉もはまっているし、耳の遠い茶店の婆さんもいい。
ところで「小間物屋政談」って大岡裁きの噺なんだけど、正直言うと、ぼくの感覚には少し冷たいようにも思う。いくら金持ちで美人で若い奥さんをもらえるからって、それまであんなに固執していた元の奥さんをさっぱり切り捨てられるものなのかな。まあ、そういうものなのだろうが、多少はとまどいがあってもいい。
また、後妻になるほうの奥さんも、お奉行に小四郎との再婚を勧められて、その場で何のためらいもなくあっさりOKする。女性の人格というものが、ほとんど考慮されていないわけだ。
江戸時代だから仕方ないといえばそれまでなのだが、何か、もっと現代人の心象にアダプトするような話の持って行き方なり演出なりがありそうな気もする。