原美術館の中庭に「KRUG×KUMA=∞」というのを見てきた。
クリュッグはフランスのシャンパンのメゾン。クマは建築家の隈研吾氏。
なんでもクリュッグ主催のパーティーに招かれた隈研吾氏が、微妙な温度の変化で味わいが変わるクリュッグのシャンパンに感銘を受けて、温度で形を変える建築を作ろうと思ったんだって。本当かいな。
建築といっても、そんなに大きくはない。高さ2.2m、直径3mのドーム型。
ちょうど人ひとりが通れるくらいの穴があいていて、よっこいしょと中に入ることができる。大きさや形は、かまくらをイメージしてもらえばよいだろうか。


もっとも、素材はまるで違う。
形状記憶合金とステンレスのワイヤーの骨組みに、白くて縮れた繊維の網がかぶさっている。繭というよりはスカスカ。キヌガサダケ、とも違うか。隈氏曰く、シャンパンの泡をイメージしたものだという。

この建築プロジェクトの売りは、骨組みに形状記憶合金を使っていることからお分かりのように、微妙な温度の変化で、建築自体の形が変わっていくこと。
今回の展示では、観客はアイスノンのような冷却材でできた大きな手袋(Cooling handと言っていた)を手にはめて、それで形状記憶合金部分を握ったり触れたりすることで、形の変化を体感することができる。
実際にぼくも手袋をつけて体験してみたのだが、形状記憶合金部分に手を近づけた瞬間、ワイヤーが手に吸い寄せられるように柔らかくなって、壁面が大きく湾曲する・・・。
正直言って、そんな劇的な動きはありませんでした。
当日暑かったこともあって、氷手袋でほんの一部を冷やした程度じゃ、あんまり効果が目に見えて分からないのね。
入口付近のコイル状のワイヤー、そこをしばらく握っていてください。で、しばらく(1分近くかな)握っていると、堅く縮こまっていたワイヤーがぐにゅーと広がるようになる。それを今度は、手袋を外して素手で握ってみると、手のひらの中でワイヤーがみるみる元の形に収縮していくのが分かる。おお。
が、言ってしまえば科学館の子供向けの体験展示だな。
使っている形状記憶合金も、合金の配合によって性質を変えることができるのか、それぞれ異なる温度で形状が戻る3種類の合金を使用しているそうだ。
でも、せっかくそうやって温度の特性を違わせても、この暑さじゃ、どっちみちすぐにあったまっちゃう。この手袋の冷却能力がもっと強力だったらよかったのかな。それだと体験者があぶなっかしいか。
人が触れることによって局所的に建物の形状を変化させるのが難しいんだったら、例えば、朝晩の時間の経過にともなう気温の変化で、全体の形を変えたりするのか。
というと、やっぱり、そういうこともないみたい。この熱帯夜じゃしょうがないですかね。それに、多少外気温が変わっても、その変化は緩慢なものだろうし。
あと、形状記憶合金というのは、ステンレスの10分の3から10分の1程度の強度しかないそうなのだけど、当初のプランでは、もっとたくさん形状記憶合金を使うつもりだったのが、それだと強度が足りなくて、骨組みにステンレスを多用せざるを得ないことになったのだという。それも、形の変化が目に見えにくかった理由のひとつかも知れない。
会場のビデオでスタッフのコメントが流れていたけど、構造体として成立させるということと、温度によって変形させるということは、どうしても矛盾する。
言ってみれば、そこが繊細さのゆえんでもあるのだろう。それに、もともとシャンパンの微妙な味わいの変化、とか言っているんだから、劇的な変形を期待するほうが間違いなのか。
というわけで、温度の微妙な変化による建築物の変形というのは、正直、ちょっと期待はずれだった。まず、そういうコンセプトがあって、それを現実の建築物として成立させるまでの試行錯誤の過程をビデオで見ることができたのは興味深かったけど。
ただ、この構造物、変形するしないはともかく、外から見て、単純に、綺麗だと思う。それに、実際に形が変わらなくても、変わりそうな繊細さをたたえている。
また、中から外を見ると、周りの景色が微妙にエフェクトがかかって見える。バナーに使った写真から、その一端を感じていただけるだろうか。
最後に、言い忘れてた。もうひとつ期待はずれだったのは、体験者にはクリュッグの一杯もサービスしてくれるのかと思って出かけたのに、そんなそぶりもありませんでした。飲ませろー!
KRUG×KUMA
http://www.krugxkuma.com


“KRUG×KUMA=?” への2件の返信

  1. へー面白い。
    開通信おもしろそうなので、お気に入りに登録させていただきます。
    申し遅れました、ももろんと申します。
    よろしくお願いします。

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