そういや森美術館で思い出したのだが、森タワーの52階に直行するエレベーター。
あれに乗っていると、もうすぐ到着というところで、
「下かご乗降中です」
というアナウンスが流れるのだが、つい最近まで、ぼくはずっと、このアナウンスを
「下か、ご乗降中です」
と言っているのだと思い込んでいて、なんだか意味がわからないなあ、どういうことなんだろ、と森美術館に出かけるたびに、エレベーターの中でぼんやりと考えていたのだ。


先日も、このエレベーターに乗っていて、例のアナウンスが流れたとき、ドアの上についているモニターに、日本語と併せて英文で、
「The lower car is now in service」
と表示されているのが目に入った。
The lower car?下のほうの車?これがどうして、「下か、ご乗降中」という意味になるんだ?と数秒間悩み、その挙句にようやく、いま自分が乗っているエレベーターの箱型の部分を「かご」と言うのであり、さらにそれを英語では「car」と言うのだということに思いが至った。
要するに、「下か、ご乗降中」ではなく、「下かご、乗降中」だったのだ。
このことに気づいたの、ほんとうに、ついこないだのことです。
世間の人たちは、こんなカン違いをしたりしないのかな?と、今しがたgoogleで「下かご乗降中です」と検索してみると、このことに触れているとおぼしきblogや日記がいくつかヒットしますよ。やっぱり同志はいるのだ。
が、そういう人たちの書き込みの日付を見ると、皆さん、もっと早いうちにこのカン違いに気づかれたりしているようで、私は改めてヘコんだりするのですよ。はい。
もう少しだけ中国展の話をする。
漢文化の展示の次は、「南北の交流 躍進する北方遊牧民」と題して、主に北魏時代の資料をまとめた展示に移る。前回も書いたように、西晋のあと、中国の北部地域には遊牧民族による王朝が次々に建つのだ。
この展示室の入口に掲げたパネルに、こんなことが書いてある。
「モンゴル高原に遊牧して暮らす彼等の戦力が、農耕の漢民族に比べ強力であった理由は、ひとえに馬上から弓を射る騎射の技術にあった。墓から鞍などの馬具や完全装備した陶馬などが出土し、実態が知れる」
が、ざっと展示を見てから、改めてこの解説文を読んで、ちょっと違和感がないでもなかった。
というのは、この部屋には、馬に乗った人をかたどった俑がいくつ展示されていたけれど、馬上の彼らの多くは、弓矢を携えているのではなく、楽器を手に音楽を奏でているのだ。
騎射の技術に長けていたという割には、音楽を演奏している俑や、西域から来た雑技団が曲芸を披露している俑ばかりが印象的で、肝腎の弓や武器を携えた兵士の姿が目に付かない。
当時、馬と日々の生活を共にしていた北方の遊牧民族が、農耕生活を行っていた漢民族に比べて、馬上から弓を射る技術に優れていたのは事実なのだろう。
が、そのことをもって、漢民族は文明化されて優れていて、北方民族は野蛮で劣っている、というような中華思想的なバイアスが、解説文のあちこちから、ほのかに感じられないでもないなあという、穿った見方をしてしまっていたのですよ、私は。
まあ、考えすぎかな。

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