新宿末広亭の9月上席昼の部に行ってきた。
末広亭は6月に小沢昭一さんが出演してたとき以来。あのときの客の入りには本当に驚いたけど、さあ今回はどうか。
1時半少し前に末広亭に入ると、1階の椅子席はほぼ満員。両側の桟敷席も後ろのほうに2、3人ほど座れる場所があるかなという程度で、後から来た客をどんどん2階に上げている。
まだ早い時間かなと思っていたら、結構入っているじゃないの。いやー、油断できませんね。


今日の出演者、むろん、世間に名前が売れている人もいないではないのだが、といって、失礼ながらマスコミ的に旬なわけでもなく、また笑点のレギュラー陣が出るわけでもない。落語ブームというのは本物なんだろうか。
ざっと見て、客層自体は以前とそう変わっていないようにも思うのだが。例えば、例の「タイガー&ドラゴン」の影響で若い女の子が押し寄せているとか、そんなことは、もちろんない。だって、長瀬や岡田本人が寄席に出ているわけじゃないし。噺家さんたちが突然いい男ばっかりになったわけじゃないし(断じて)。
逆にいえば、特定の客層だけが突出するのではなく、従来の客層がまんべんなく増えているのだとしたら、それこそ、落語「ブーム」などではなく、本当の人気だということになるのかも知れないけど。
ということで、最初は1階の桟敷席の後ろのほうで、あとから来る連れを待ってから、1時半を幾分回ったあたりで2階に上がった。その時点で、すでに2階席も半分程度は埋まっていたんじゃなかったか。最前列の一番右端のあたりに陣取る。
ぼくが中に入ると、高座には古今亭寿輔師。いつもの派手な衣装だが、入口のほうが気になって、申し訳ないけど噺の中身は覚えていない。
2階に上がって、北見マキさんの代演、若倉健さん。実はこの人初めて見た。歌謡モノマネ。人選は裕次郎、小林旭、演歌系など、古め。
続いて三笑亭可楽師。あれ、番組表と順番違うぞ。まくらで後に出てくる御大二人をリハビリに寄席に出ている等とからかったりしつつ、大学出の落語家の話もしてたっけ?ネタは、内臓屋とでもいうのか。ちょっと「犬の目玉」みたいだが、移植用にいろんな有名人の内臓を取り揃えているというお店。五臓六腑についてのウンチクもありつつ。小泉さんと岡田さんの心臓(だったかな?)、どっちにするか決めかねている客に、いつ決まるんだと聞くと、9月11日というオチ。時事ネタに持ってくるか。
その次に笑福亭鶴光師。どういうわけかこの二人の順番が入れ替わっている。ネタは「紀州」。御三家の説明で脱線しては戻り、八代目といえば、と脱線しては戻る。ほんのちり紙やがな、と言って、本当にちり紙をねじこむのは人間としてやってはいけないこと。そこかしこでしっかりウケている。でもちゃんと本筋に戻ってくる。
玉川スミ師。ぼくらの席が二階の右隅、エアコンがウンウン唸っている隣というせいもあるのだが、声が小さくて何を言ってるのか聞き取れない。特に最初のあたり。明治一代女の山手線駅名読み込みになって、ようやく耳が慣れてきたのか、だんだん聞こえてくる。それでもよく分からないけどね。やはり芸能生活80周年だか85周年だかの話はするのか。でも、そうやって説明してくれないと、ありがたさも伝わりにくいい。
桂米丸師。待ってました!なのだが、やはり声が聞こえない。聞こえないなりに精一杯集中して耳を澄まして聞いていると、今年の初めに心臓を手術してたんだって?知らなかった。全身麻酔、看護師の話などで笑わすが、明らかに弱々しく、少し切なくなる。ネタは生前の星新一に許可をもらって落語にしたという「宇宙戦争」。当然、先ごろまで上映されていた映画への言及もある。さすがにこういう感覚は、若いなと思う。初めて聞いたのだが、最後は急にストンと落ちた感じで、え、と思った。聞き取りづらいせいもあるのか。
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お仲入り、ではなく終演後
中入り後は、神田紅さんから。オッペケペー節で知られる川上音二郎と貞奴が出会ってヨーロッパに発つあたりまで。紅さんも博多出身だというから音二郎の博多弁はいいですね。でもオッペケペーは聞いてて少しはずかしい。なぜだか。選挙ネタを入れた自作のオッペケペーもやっていたが、やはりはずかしい。
桂小文治師は「酢豆腐」。春雨や雷蔵師「権助提灯」。
このあたりから、大喜利に向けて噺をコンパクトにまとめているか。
すいません、小文治師も雷蔵師も感想書いてないですが、両師とも違和感なく、するっと体に入ってきて、遠くても明晰に聞こえていたということです。
江戸家まねき猫さんの代演は、春風亭美由紀さん。この人好きなんだ。代演でウレシイ。両国中学出身だって知りませんでした。寺尾は安田学園か。ふーん。欲をいえば、ちょっと踊ってほしかったけど。多少短めだったし。まあでも、この後がこの後ですから。
トリは雷門助六師。といっても、長講ではなく、チョコッと、というやつです。女の尻につける薬ね。助六師もまだ中堅なの?
さて、なぜ助六師がチョコッとかというと、トリのあとに、まだもうひとつあるからです。そう、お待ちかねの住吉踊り。
住吉踊りというと、毎年8月に落語協会が浅草演芸ホールでやっているらしいけど、そっちのほうは、実は見たことありません。というのは昼の部じゃ平日は行けないし、土日になると、お盆休みで帰省している時期に重なってね。だからというわけじゃないけれど、9月の末広亭で住吉踊りを見るのは、ぼくは去年に続いて二度目。
メンバーは、助六師、雷蔵師、小文治師、紅さんに、昼の部の高座には出ていないけれど、夜の部出演の桂右団治師。女性ですよ。それから、この人は、昼にも夜にも出ていないのだけど、やはり女性で、北見・・・さん。もともと奇術の人ということで、舞台で紹介されてたけど、名前が聞き取れなかったのですよ。今はどこの協会にも属していないということだけど。この人、去年も出られてたのかなあ。でも、かなりキーになっている人ですね。
ぼくはときどき寄席に足を運ぶようになって、もちろん取っ付きは落語からだったんだけど、だんだんと寄席踊りに惹かれているのです。来年はもっと、予習してから来ようと心に誓った。
あと、助六師のソロの踊りも見たかったなあ。前に見た「あやつり」とか。和製ムーンウォーク。初めて見たときは、大げさでなく、幻惑かつ圧倒されましたよ。
この日は千秋楽ということで、最後は客席も一緒に、「健康が元気でありますように」三本締め。
少し早いけど、夏の終わりを締めたという感じ。こういうのもいいなあ。来年も千秋楽に来られるだろうか。
探したら、こんな記事があった。
住吉踊り…夏の風物詩志ん朝が復活(YOMIURI ONLINE)
http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/stage/trad/20050727et01.htm
失礼ながら名前がわからなかった北見・・・さんというのは、ひょっとしてこの人だろうか。
住吉踊り 北見寿代師匠インタビュー
http://homepage3.nifty.com/kejokoku/wagei/sumiyoshi/sumiyoshi1.htm

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