ヴィトリーヌという作品を、ぼくは誤解していたと思った。
そうか、これは光の中で見るんだ。
本当は、こんな暗いところで見るものじゃないんだ。外光でも人工光でもいい、とにかくまばゆい光を当てて、これらの作品を見直してみたい。そうすれば、ずっと当時の人たちの目に近づけるのではないだろうか。
そんなことを思った。
山口勝弘氏が1950年代に手がけた、ヴィトリーヌと呼ばれる一連の作品については、これまでも実験工房や瀧口修造がらみの展覧会で、何度か見る機会があった。
が、実験工房という、いくぶん神話がかった過去の歴史の遺品を目の前にしているのだということ以上に、正直言って、さしたる感興があったわけではなかった。
偏光ガラスの向こう側の、抽象画ふうの直線や矩形、そのくすんだ色彩も、余計にひと時代もふた時代も前の作品という感を強くした。
昔はこういうのが新しかったのだろうなと、なかば自分で自分を思い込ませるように、作品の前で、やたらと見る角度を変えたりしていたのだけど・・・。