尾崎さんの個展が今日までなので、もう一度見に行ったついでに向かいのビルを覗いたら、藤幡正樹さんの個展をやっていた。
そうかそうか、これも今日までだったかと思って中に入ると、おお、藤幡さん本人が誰かお客に作品の説明をしているところではないですか。
念の為、むろんご本人と面識があるわけでもなんでもない。少し離れたところから、おお本物の藤幡正樹だと胸をときめかせて見ているだけなのですよ。って、おれは変態か。変態ではないかも知れないが、ミーハーだ。


入口に置いてあったポストカードの文章を読むと、
「シルエットを作って交換することが、18世紀に流行ったらしい」
いきなり、この1行目の意味から分からない。シルエットを作って、交換?
ここはせっかく文章を書かれた当人が目の前にいるのだから、どういうことか聞いてみようかと一瞬思ったが、そういう安易なことではヨクナイと考え直し、ウェブで検索してみた。すると、
http://www.f.waseda.jp/kusahara/fromShadow.html
こんなページが見つかったので勉強になる。って、これ草原真知子さんのサイトですか。
しかし、このページで紹介されている、ヨーロッパの都市でシルエット師なる人がパーティーの余興として出席者の横顔を切り抜いて回っていた、という話など、まるで日本の紙切芸みたいじゃないですか。紙切りも、今でこそ寄席で見るものだけど、もとはお座敷芸だったのだろうから。
ただ、寄席の紙切りというと、特定の人の顔というよりは、その時期の年中行事だとか、昔ながらの庶民の風俗に題を取ることが多いのかな。まあ、不特定多数を相手にした寄席で、特定の客の顔を切り抜くというのは、頼む人も勇気が要るか(「何を切りましょうか」「私の顔!」誰か、そういうリクエストをすればいいのに)。
話はどんどん逸れていくが、あれは末廣亭だったか、紙切りの林家正楽さんが高座から題を求めたとき、客席から「ウサマ・ビンラディン!」という声が上がった。
ちょうど9・11後のアフガン侵攻のころだったとは思うが、おいおい、いくらなんでもビンラディンはないだろうと思いつつ見ていたら、程なくして、正楽さんは本当にそれらしく見えるターバン姿の男の正面像を切り抜いたので、その当意即妙ぶりに感心したものだ。
お客に「何でも切ります」と言っている以上、中には突拍子もない題を出してくる人もいることだろう。できません、とか、それは何ですか、というのも格好悪いし、紙切りの芸人さんも大変だ。一方で、ビンラディンをリクエストした客も、もしそういうことを全部承知のうえで題を出したのだとしたら、なかなかやるもんだと思う。
* * *
藤幡正樹 「Portray the silhouette? 絵画の起源」
会場: ASK? Art Space Kimura
スケジュール: 2006年10月25日 〜 2006年11月18日
住所: 〒104-0031 東京都中央区京橋3-6-5 木邑ビル2F
電話: 03-5524-0771 ファックス: 03-5524-0772

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