またAAF学校の話。
今回は「アートで育む地域のネットワーク ―向島のプロジェクトを振り返って」と題して、現代美術製作所の曽我高明さんが講師。
ここ10年の向島のアートとまちづくりが絡み合う動きを概観する1時間半だった。
向島地区でのアート・プロジェクトについては、ぼくは、2004年の向島yearくらいからは、断片的にせよ実際に見てきたものもあるが、それより前のことはほとんど知らない。
だから、現代美術製作所の開設の経緯や、当初の企画などについては特に興味深く見た。また、向島での一連の動きは、当初はアートより都市計画の色合いが強かったことも再認識した。
ぼくは2000年の夏から墨田区民になったはずなのだが、越してきて2、3年ほどは、向島で進行している動きには、はなはだ無頓着だった。
これは、その頃のぼくの気分がアートから離れていたせいかも知れない。
また、同じ墨田区とはいえ、向島に、なんだか別の区みたいな距離感を覚えていたせいかも知れない(じっさい、戦前は別の区だった)。
何より、向島まで電車で出かけるのが面倒だった。半蔵門線が押上まで延伸するまでは、東向島駅に行こうとすると、一回浅草まで出ないといけない。
東向島駅のあたりまでだったら、電車で行くより、自転車を飛ばしたほうが手っ取り早いということに気がついたのは結構最近の話で、もともとの土地勘がないから、どのへんまでなら自転車で行けるかということが、体にしみついていないのだ。
さて、実は、今回の話で一番感じ入ったのは、(全然話の内容についてではないのだけど)講師の曽我さんの弁舌の巧みさで、向島在住の若い大工さんであるゲストの北條さんと掛け合いが、まるで漫才でも聞いてるみたいに流れるように進行していく。
曽我さんはかなりの早口で話しているのだが、それでいて、言葉がつっかえたり、聞いていて引っ掛かりを感じるところがない。また、曽我さんは声もいいんだな。だから、聞いていて、生理的に快い。
ことはアートに限らないのだろうが、こういうプレゼンテーション能力、あるいはコミュニケーション能力というのは大事なんだろうと思う。
アート・プロジェクトを現場でやっていこうとすると、いろんな関係当事者と調整を要することも多いだろう。それも、アーティストもいれば、近所のおっちゃんおばちゃんもいれば、地元企業も行政もある。そんな多様な相手を言葉で説得納得させて、話を通していかなければならないのだから大変だ。
もうひとつ感じたのは、曽我さんも北條さんも喋っていて本当に楽しそうに見える。聞いているこちらが嫉妬したくなるくらい、楽しそうに見える。
そういう楽しさに魅惑されて、吸い込まれてしまえばいいのかもしれない。
が、喋っている曽我さんたちには悪いのだけど、正直言って、ちょっと、鼻白むところがないでもなかった。
この感覚はなんなのだろうか。アウトサイダーとしての疎外感、なのかな。
とはいえ、ぼくは、これまで、アウトサイダーとして見ているだけだったし、何より、ぼくにできることは見ることくらいなので、見ることをちゃんとしたい、という思いもある。
いったい、今回のプレゼンテーションは、オルガナイザーたる曽我さんと、それに巻き込まれた地元の北條さんとの話だから、もっぱら、やる人の視点からの話だ。だから、仕方ないのだろうが、そこに、見る人の存在を、あまり感じなかった。
プレゼンの最後に、すみだタワーの話が出た。10年も前から、それこそまちづくりの話とも絡めて、さまざまなアート・プロジェクトが向島で展開されてきて、それが、ぽっと沸いてきたようなタワーの話には、結局どうしようもないのかという思いが残った。
とはいえ、ぼく自身は、タワーのことはよく分からない。よく分からないうちに、既成事実化しているのは、ちょっとどうかと思うが、大反対するほどの元気もない。反対するならするで、いろんなしがらみを断ち切らないといけないだろう。
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『AAF学校2007 vol.8「アートで育む地域のネットワーク ―向島のプロジェクトを振り返って」』
会場: アサヒ・アートスクエア
スケジュール: 2007年06月28日 19:00~20:30
住所: 〒130-0001 東京都墨田区吾妻橋1-23-1 アサヒスーパードライホール4F