映画「サディスティック・ミカ・バンド」を見る

有楽町で降りたのは久しぶりだが、油断しているうちに駅周辺の景観が一変していて驚く。
しかし今回の上映、全席指定で、しかもプレオーダーまで設定してあるというのは、ずいぶんご大層なものだなと思う。
上映時間が近くなると、かなりの席は埋まってきたが、なぜか前方3列はスカスカである。あるいは、あのあたりがプレオーダー席なのか。
当方は劇場で映画を見るときは、なるべく最前列に陣取ることにしている。周りを気にせずゆったりと足を伸ばせるし、それに昨今のシネコン風の映画館では、スクリーンが小さくて劇場で見る有難味がないと思う。
誰もいない最前列を見ていると、モッタイナイなという気がしてくる。


映画自体は、正直あまり期待せず出かけたので、かえって結構楽しめた。
ライブ映像の断片にメンバーのインタビューを組み合わせた構成は、前に見たムーンライダーズの30周年映画と似ている。
しかし、ライダーズの映画ほどの緊張感はない。どこかが、ゆるい。
「薔薇がなくちゃ、生きていけないっ!」的なソリダリティーとは無縁の御仁である。
そもそも、ミカがいなくても平気でミカバンドを名乗る融通無碍さ。
今回の再結成にしたって、メンバーの誰かが言い出したことではなく、まずCMの話があって(加藤氏言うところの「外圧」)、「面白いんじゃない?」的なノリで始まったことらしい。
まるでパーティーバンドみたいな軽いノリ、それでいて、ふと「バンドっていいよね」なんて言い出しかねないところもある(ということは、バンドでなくてもいいってことでもあるか)。
もっともらしくバンドメイトのことを語るインタビュー映像よりも、時々挿入される軽井沢でのレコーディング合宿の様子、そしてコンサート終了後?の打ち上げの映像が、一番ミカバンドっぽかった。
あと、高中正義氏の肉声はほとんど聞こえない。インタビューもない。
だからということか、合宿の映像で高中氏の声が聞こえるだけで、妙なプレミア感がある。 それでいてステージでは自己主張全開なんですよねえ。奥田民生氏と競演している姿も新鮮。というか、他のバンドメイトと絡んでいるだけですでに新鮮なんだからズルイ。
そんな高中氏の突き抜けたドクドク感があってこそのミカバンドなのだなあと再認識。
ぼくは88年の桐島かれんミカバンドを学生時代に聞いていた世代なのだけど、その時の再結成と比べると、CDでもライブでも、高橋幸宏氏が一歩引いた感じ。
でも、今回はそれでよかったのでは。ミカバンドのフロントマンはやっぱり加藤和彦氏で、加藤さんはステージでの自然なポーズひとつひとつが実に絵になる。
幸宏さんも、ライブでボーカル取っているときなど、たまにポーズつけたりしますが、こう言っちゃ悪いですが、あんまりカッコいいとは思わないです。
やっぱり、端整にドラムを叩きながら、みんなみたいに目立ちたいのに目立てない、そんな屈折した表情をちらりと見せる幸宏氏がいいんじゃないかと思います。
あと、ステージのセットや雰囲気がこじんまりとしていて感じよかった。加藤氏はロンドンの古い劇場みたいにしたかった、というようなことをインタビューで言っていたけど、確かにそんな感じかな。

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