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作家:アイ・ウェイウェイ
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示‐非営利‐改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。

・・・いや、こんな写りのよくない写真にまで律儀にライセンス表示することはないのかも知れないけど、何しろ展示室内で作品の写真を撮ってもいいと言うものだから。
それなら正々堂々と撮って、正々堂々とブログに掲載しましょうと。
そこは、限りなく遵法精神ということで。

迂闊にも知らなかったのだが、この展覧会の「何に因って」というタイトルは、ジャスパー・ジョーンズの作品名から採っているのだという。
つまりこの人、大マジなのだ。誠実に20世紀の美術の流れを辿って、それを自分の血肉にしている。西洋からの視線に安易に迎合したり、奇をてらったりすることはない。何しろ、80年代をニューヨークのアートシーンに触れて過ごした人なのだ。
最初の展示室に並ぶ立体の作品は、どれも一見ミニマルに見えるが、間近に寄るといずれも素材使いが面白い。
紫檀の立方体など、中国らしいと言えばそうなのだろうが、むしろ汎東洋的な感もある。
1トンのプーアール茶の立方体。周囲には発酵茶の香り。表面に近づくと、無数のお茶っぱが細密に絡み合うディテールが、どこか伝統的な模様のような。
ある物質を徹底的に集積していくのは、もしかしてこれも現代美術の文脈によるのかも知れない。しかし、単なる集積に留まらない何かが自然に漏れ出ている。
1立方メートルの木枠が並んでいる。これも、近づくと花梨の木目に安らぐ。
キャプションには、これは芸術作品であると同時に「中国で使われるテーブルとしての機能も備え」云々とある。本当だろうか。少なくともぼくには、この1メートルという高さはどうにも中途半端で、テーブルとして機能的とは思えないのだけど。
サッカーボールのような五角形と六角形のフレームを球形に組み合わせた作品も、花梨の木だというから、この素材感の一貫さには感じ入る。
大きな容器2杯に山盛りの真珠。おそらくは規格外の商品にならないものを集めたのだろう、真珠という字義には合わないが、どの粒も球状とは言いがたい。むしろ、そのゆがみゆえ、有機感をまとって、真珠というよりは虫のように見える(むろん、真珠も有機物にほかならないのだが)。例えば、カブトムシのような甲虫の幼虫を大量に集めたような。あるいは、どんぶりに山盛りのイクラ丼。
今度は家の形に固められた茶葉。題して「茶の家」。まさに茶室か。日本の茶室には背をかがめて入らなければならないが、この茶室は中に入ることさえできない。
展示室の床から壁面まで埋め尽くす写真の連作。真新しい建造物と慌ただしく片づけられた生活の痕跡が並置する「暫定的な風景」。キャプションに曰く「1949年以降土地が国有化されている中国では、政府が広大な区域を土地の買収交渉なく開発することができます。開発が決まるごとに、都市の景観の中に突如として現れる広大なヴォイド空間」と。
「漢時代の壺を落とす」「彩色された壺」そうか!この手があったか!
とはいえ、この手は中国以外では困難だ。千年単位の時間軸を一瞬に超えて、突き出された力強さ。タイムマシンが突然目の前で爆発したような。
「断片」古い廃材を使った伝統的な工法による作品ということだが、不思議にロボットの手足のように見える。

* * *

アイ・ウェイウェイ 「何に因って?」
会場: 森美術館
スケジュール: 2009年07月25日 ~ 2009年11月08日
9月22日(火)と11月3日(火)は22:00まで
住所: 〒106-6150 東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー 53F
電話: 03-5777-8600

レクチャー「アイ・ウェイウェイ・チューズディ」
第1夜 アイ・ウェイウェイの問い
出演:片岡真実(森美術館チーフ・キュレーター)
日時:2009年8月18日(火)19:00 – 20:30
会場:森美術館展示室内

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