こう言うとギャラリストからよくは思われないのだろうけど、ぼくは、画廊を冷やかしに覗くことはあっても、作品を買おうと思って足を運ぶことは、まあ、ない。
以前、あるギャラリーを覗いた時、ぼくの関心のあるテーマの展示だったから、丹念に作品を見て、スタッフの方にあれこれ質問もしていたら、そのうちに話の流れが、なんとかして展示作品を売らんかなという方向になってきて、適当なところで退散したことがある。
しかし、当たり前のことだ。商業施設なのだから。

改めて、公立美術館というのは、すばらしい制度だと思う。少なくともその点では、フランス革命は、よくやった。われわれは、この権利に安住してはならない。
さて、では、なぜ、ぼくは作品を買わないのか。美術ファンを自称するのなら、作品を実際にコレクションしてナンボではないですか。
正面切って問われたときの逃げ口上なら、いくつか用意してある。すなわち、飾る場所がない、保管する場所がない。そんなことよりも、何よりも、先立つものが心許ない。
では、場所ふさぎにならず、かつ、手の届きそうな値段なら、作品を買うのですか。
作品の大小と金額の多寡は相関するものではないが、といって、まったく無関係ということもない。一定の場面では、相似することもある。
今回展示されている作品は、どれも0号の大きさ。会場の配置図とともに手渡された出展作品のリストには、すべて価格が書き添えられていて、見れば、安いものは数千円から、高いものでも2万円台か。
この値段なら・・・。財布の中身はどうなっている。いやいや、ちょっと待て。
あり得べきコレクターとしての自分を、ほんの少し意識した。
さあ、このままぼくは、すぐにこのギャラリーを出て、近くのATMに向かい、幾枚かのお札を握り締めて、再びここに戻るべきなのだろうか?

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3月にこの場所で見た倉持幸子さんは、今回も、お寿司の小さな油彩画を出していたけど、0号の大きさには、寿司桶の中のお寿司は映えないように感じた。
むしろ、一貫をキャンバスいっぱいに描くほうがよいのでは・・・。
今回の展示では、土屋祐子さんという方の作品が心に残った。”volcano”と”skirt”。

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第2回 MARKET TRACE “極小から無限大へ”
会場: Art Trace Gallery
スケジュール: 2009年05月01日 ~ 2009年05月12日
金曜日は21:00までオープン。
住所: 〒130-0021 東京都墨田区緑 2-13-19 秋山ビル 1F
電話: 050-8004-6019

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