「おばあちゃん」という言葉は、自分の祖母を指すこともあれば、年配の女性一般をいうこともある。
ところが、英語で”Grandmother”というと、血縁の祖母に限られるのではないですか。
試みに、英語の辞書を引いてみよう。曰く、
“Your grandmother is the mother of your father or mother.”
手許の辞書にはそれ以外の定義はない。さっぱりしたものです。
つまり、”Grandmother”というからには、単なる老女ではない。まず”mother”にならない限りは、”Grandmother”になれないのだからね。
自分が母親になること、そして自分の子供がさらに子供をつくること。この作品のモデルたちは、みんな、そういうことを当然のように感じているのかな。作家も含めて。
一方で、男のモデルもいたという。自分のおばあちゃんに出し続けていたポストカードに囲まれている、あれは男だったのか。
この場合は、自分が老婆になった姿というよりは、自分が好きだったおばあちゃんと自分を重ね合わせているというふうにも思える。
そういえば、男性の芸人でおばあさん役を演じる人って、結構いますね。
すぐに思いつくのは、吉本新喜劇の桑原和男。青島幸男は意地悪ばあさんを演じた。それから、ばってん荒川。先代の古今亭今輔は「お婆さん落語」で売り出したという。
あれ?逆のパターンはないね。女性タレントが年配の男性を演じるケースは。
これも考え出すと、いろいろ深いものがありそうだ。
自分が40年後、50年後、まだ生きながらえていたとして、”Grandfather”になるイメージはわかない。それは言うまでもなく、今の自分が”father”たりえないからだが、仮にそうでないとしても、男は、この文脈のようには、”Grandfather”にはならないんじゃないですか。単なる”old man”として、野垂れ死ぬだけではないのかと。少なくともぼくは、それを夢想する。
“My Grandmothers”のシリーズでは、少女たちの夢を無残に打ち砕く老占い師が好きです。
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『やなぎみわ「マイ・グランドマザーズ」』
会場: 東京都写真美術館
スケジュール: 2009年03月07日 ~ 2009年05月10日
住所: 〒153-0062 東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
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