芝浜/御神酒徳利
芝浜/御神酒徳利
桂三木助(三代目)

われながら相変わらず酔狂なことだが、今年に入ってから「80年後の隅田川に白魚が棲めるようにする」活動に首を突っ込んでいる。
いや、いただいた企画書には能書きがさらにあれこれと書き連ねてあるのですが、こちらの都合上、思い切って省略しますよ。
この小文の趣旨は、「隅田川」と「白魚」という二題です。

最初、企画書の白魚のくだりを読んで、この「白魚」というのは、実際の魚の種類のひとつを指しているというよりは、キレイな魚のことを比喩的に白魚と言っているのかと思った。
そうでなければ、実際に隅田川に白魚が棲むようになるなんてありえない、という含みで、あえて達成困難な話を持ち出すことで、未来の隅田川に鮮烈なイメージを与えようとしているのかなと。
それくらい現在の隅田川と白魚というのは容易に結びつかないのだけど、今となっては、そんなふうに考えていた自分が恥ずかしい限り。
というのも、江戸の昔、白魚は隅田川の名物だったのですね。
おそらく、この企画書を作った人はそのことを知っていて、隅田川といえば白魚という連想で、ごく自然に白魚を持ち出したのだろう。改めて、自分の物知らずに冷や汗が出る思いですが・・・。
さて、雑誌「東京かわら版」の去年の12月号を読むでもなく読み返していたとき。
東京かわら版には稲田和浩さんが演芸の定番のネタを解説する連載記事があって、この号で取り上げているのは「芝浜」。酒好きの魚屋が芝の浜で大金の入った財布を拾って・・・という、落語ファンにはおなじみの一席でしょう。
記事中に曰く、三代目桂三木助は、この「芝浜」を演じるのに「隅田川で白魚が獲れた」というマクラで語っていたという。
そうか、そうだったのか! この解説を目にした瞬間、「隅田川」と「白魚」という二つのキーワードが、ぼくの頭の中で音を立てて結びつきましたね。
早速、近所のCD屋で三木助の「芝浜」を買ってきました。

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