渋谷から
喋っているのは吉田類氏
商売と演技 その2
この話の続き。
前回書いたようなことは、程度の差こそあれ、多くの人が経験しているのではないか、と思う。
ただし、ぼくの場合、その女の人のキャラクターのせいもあって、その人が電話に出る前と出た後の口振りの差が、余計に大きく見えた、いうことはある。
そしてもうひとつ、今にして思えば、当時のぼくは、商売で売り手の側に立ったことがなかったので、その人の態度の変化を、ただ奇異なものとしか認識できなかったのだろうと思う。
コンビニやファーストフードなどで、客商売のアルバイトの経験のある人なら、目の前の客に媚を売ったり、美辞麗句を弄したりということは、日常茶飯だろう。
そうであるなら、客とそうでない人とで、こちらの態度をガラリと変えることなど、さほど驚くことではない、と考える人も多いのかも知れない。
商売と演技
学校を出て最初に勤めた職場で、ぼくの上司になったのが、まあ、これがなんともアクの強い、クセのある女性であった。もう10何年も前のことだ。
この人も、今にして思えば、今のぼくと同じくらいの年だったのではないか。
そう考えてみると、また少し違った思いが沸いてこなくもないが、少なくとも当時、その人とぼくは、ソリが合わないというのか、なんというのか、まず、一緒に仕事をしていて、楽しいとか気が休まるとか、そんなことは一切なかった。