梅雨の晴れ間を逃さず洗濯。次はいつ晴れるか、最近の天気予報は当てにならないからね。
池袋演芸場七月中席昼の部に。これでコロナ禍からの営業再開後、都内の主だった定席――上野鈴本演芸場、新宿末廣亭、浅草演芸ホールと、この池袋演芸場――をひととおり回ったことになる。厳密にいえば国立演芸場はまだだが、いずれ訪れる機会もあるだろう。
前回池袋演芸場に来たのは今年の3月。しかしその時は中に入れなかった。三月上席の神田伯山の襲名披露を目当てに来たら、出遅れてしまい既に入口前には長蛇の列ができていた。それからまだ半年も経っていないのに、隔世の感がある。
開口一番 桃月庵あられ
落語 金原亭小駒「無精床」
落語 三遊亭ぐんま「銭湯最前線」
ぐんまさんは白鳥門下の新二ツ目。名前のとおり群馬県出身。東京の銭湯体験の驚きを噺に仕立てたような新作だ。
音楽漫談 のだゆき
落語 古今亭志ん陽「猫と金魚」
先に上がったぐんまさんが銭湯の情景を描写するのに、広げた扇を股間に当てて「モザイク」、これは古今亭には出来ないだろうとやったのを、古今亭を代表して「モザイク」。
落語 春風亭一之輔「手紙無筆」
漫才 ニックス
ニックスのお姉さんのほうが最近結婚したがまだ式を挙げていないということで、どんな結婚式に憧れるかという話など。
落語 林家正蔵「皿屋敷」
かつて先代正蔵、つまり彦六師が若手を集めて怪談噺を稽古していたという。幽霊とお化けの違いを問われた彦六師の答えは。池袋は演者との距離が近いせいか、正蔵師の面持ちから、かつての稚気が抜けて、ぐっと渋みが増しているように見える。どこか米朝師を髣髴とするような…というのは言い過ぎか。
落語 隅田川馬石「たらちね」
婚礼に当たって、隣のおばさんに「赤の御飯に尾頭付き」を用意してもらうというくだりを初めて聞いたように思う。それにしても、結婚式を夢見るニックスの漫才の後で、落語国のさっぱりとした婚礼であることよ。
浮世節 立花家橘之助
この人を襲名後聞くのは初めてかも。小円歌さんの頃によく永六輔さんのラジオに出られていたのを聞いた。「なすかぼ」。前座のあられさんを舞台に上げて太鼓を叩かせ、かつての名人の出囃子「野崎」(八代目文楽)、「一丁入り」(五代目志ん生)、「老松」(三代目志ん朝)。浮世節「たぬき」を時間まで。
落語 五街道雲助「夏どろ」
ここ一ヶ月ほどで三人の「夏どろ」を聞いた。それにしても演者によって違うものだと思う。雲助師は芝居の一幕を見るよう。
落語 林家木久蔵「後生鰻」
お父さんの前名を継いで顔の売れた人だが、この人の高座は前にいつ聞いたか思い出せない。まくらを話す様子が妙に力が入ったように見える。噺に入るとそうでもないのだが。
落語 柳家はん治「ぼやき酒屋」
はん治さんは桂文枝(三枝)作の創作落語をよく高座に掛けている。この演目もそう。
奇術 アサダ二世
落語 古今亭志ん輔「らくだ」
はん治さんの「ぼやき酒屋」で居酒屋の客が歌った「月の法善寺横丁」を、酔っ払った屑屋に「包丁一本~」と歌わせる。ぐんまさんと志ん陽さんの「モザイク」もそうだが、こういう演者間のリレーも寄席ならではの楽しみ。
芝居がはねて、近くの立ち食い蕎麦屋に。この店は志ん輔師のブログで見て、池袋に行ったら入ってみようと思っていた。まあ、特にどうということもない立ち食い蕎麦屋だが、こういう食い物は、そのどうということもなさに味わいがあると言うべきだろう。
コロナ対応の例に漏れず、池袋演芸場でも最前列は使用せず、二列目以降も一席ずつ空けて着席することになっている。もともと90席余りとそう広くない寄席だが、今は最大でも39席しか使えないのだそうだ。
が、池袋演芸場といえば、寄席の中でも客入りが薄いことで演者からいじられるのが定番になっている(プロ野球でいえば、ロッテオリオンズ時代の川崎球場のようなものだ)。この日一之輔さんも言っていたが、39席にしたといっても普段と変わらないんじゃないかと。
しかし考えてみれば、キャパシティーの三分の一程の客入りで営業が続けられるというのも大したものだと思う。逆に言えば、三分の一を常態にしているということだよね。そりゃあ、時には伯山襲名のように満員札止めになることもあるけれど、そちらのほうに基準を持っていくことはしない。
今、コロナ禍で多くのホールが観客間の距離を空けることを強いられて、以前より客数を入れられなくて苦労していることと思うが、お客が三分の一入れば御の字、満員の客はあぶくのようなものと考えて長らく続いてきた寄席のあり方というのは示唆的なんじゃないかと思う。
夜の散歩から銭湯に。日曜夜10時、閉店一時間前の銭湯は賑やか。露天風呂で喋っている若いやつらもいるが、まあ仕方ないか。夜の街角にひまわりが咲くのを今年初めて見た。14,608歩。