鈴本演芸場の「錦平の会」に行ってきた。今回のゲストは林家こぶ平さん。
ぼくが会場に着いたときには、もう前座さんの落語が始まっていて、どうもすいませんと言いつつ真ん中のほうの座席に陣取る。
前座は林家たけ平さん。うちに帰って年鑑を見ると、こぶ平さんの弟子という。この人は、前にも見たことがあるぞ。確か、黒門亭で錦平さんがトリをとったとき、やはりたけ平さんが前座と座布団返しをしていたんじゃなかったか。東海大の出身ということは錦平さんの後輩か。


たけ平さんのネタは「狸の札」。途中からだったけど、ぼくはこの人の落語は好きだな。
次、二つ目の林家ほや平さん。やはりこぶ平さんの弟子。頭も師匠と同じように丸刈りにしている。ネタは「子ほめ」。この人のどこかぼやけたような落語を聞いているうちに、目蓋の上下がくっついてくる。
今度は手品の伊藤夢葉さん。この人を見るのは多分初めて。けっこう恰幅のいいおじさん、といっても、油断するとぼくと年はあまり変わらないかも。ひょうひょうとした喋りで客を乗せていく。いきなり舞台上でムチをふるったのは驚いた。ああやって音が鳴るんだ。手品じゃないですけどね。
さあ、待ってました、錦平さんの登場。まくらで旅についての小話を2、3やってからネタに入る。「ねずみ」は、左甚五郎の旅先の仙台での話。
錦平さんの演じる甚五郎は、宿の客引きの子供が勝手なことを吹っかけても落ち着いて鷹揚にかまえている、大人(たいじん)という雰囲気。最近続けて二つ目さんの「竹の水仙」を聞いたけど、人によって甚五郎の印象もだいぶ違って聞こえるものだと思う。
ところで、この噺には、木彫りのネズミが桶の中で動くことについて、どうして動くのかとかいう説明はないんですね。甚五郎の彫ったネズミは動いて当然だろ、という感じ。サゲの「ネコかと思った」というのもネズミのセリフなわけでしょう。そう考えれば「竹の水仙」も同じことだけど、超自然的というか、ちょっと神秘的な趣もある。それだけ甚五郎が神格化されていたということかも知れないけど、きっと昔の人には全然違和感なく聞こえたんだろう。
休憩を挟んで、ゲストのこぶ平さんの出番。高座のこぶ平さんはテレビのバラエティー番組で見るよりも固くなっているように見えた。錦平さん言うところの「林家の総帥」正蔵の襲名を控えているわけだけど、その気負いもあるのだろうか。
ネタは「四段目」。芝居好きでおっちょこちょいな小僧さんのキャラは、こぶ平さんに合っているのだろう。旦那にしかられてベソをかいたり、蔵の中で忠臣蔵の場面を反芻したりする小僧さんは、まるでこぶ平さんの分身のようだ。でも、どうせなら自分のキャラから離れたところで勝負するこぶ平さんを見てみたいとも思う。また、全体に余裕がないように感じられた。ひとついいところでトチったしね。前後の錦平さんの落語と比べてしまうと、どうしても安定感が違う。
最後は錦平さんの「みいら取り」。もう何も言うことはないので、本当に堪能、満足した。
長い間座っていてちょっとお尻が痛くなって、一瞬、痛いな、と現実に戻るんだけど、そこを錦平さんがさっと落語の中に連れ戻してくれる。お尻が痛い、この噺ももうすぐ終わるのかな、でももっと聞いていたい。え、清造まだ酒飲むの、若旦那も帰り支度始めちゃったよ、どうするんだい、あ、というところで幕が下りる。

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