丸の内落語会というのに行ってきた。会場は丸ビル1階のカフェease。
最近ここが演芸のページみたいになっているような気もしますが、こうなったら、いっそ、そう受け取っていただいてもかまいません。
ということで、やってきました丸ビルに。
丸の内落語会という企画、今回が5回目だという。ぼくは初めて。


この空間のどこが落語会の会場になるのかなと思っていたら、カフェの奥の中二階になっているフロアの座席をとっぱらって、そこに高座と客席をしつらえている。ガラス張りになっているから、外から丸見えです。
5人掛けの椅子席が、高座に向かって横に2つ、縦に5、6列もあったのかな。脇にソファーとか別の椅子もあって、そんなにお客さん来るのかなと思いつつ、ビールを飲みながら開演を待っていると、だんだんお客さんが入ってきて、始まる頃には7割方の席は埋まっていたように思う。場所柄もあるのだろうが、スーツ姿のサラリーマンやOLの姿が目に付いたのも、あまり他の落語会や寄席では見かけない風景(というぼくもスーツ姿だったけど)。
開口一番、春風亭小まささん。小柳枝師匠の弟子の前座さん。ネタは、桃太郎というのかな。父親が子供を寝かしつけようとして桃太郎の昔話をしてやったら、ませた子供が親を質問攻めにしたり物語の新解釈?を聞かせたりして、そのうちに親のほうが寝てしまうという話。それを聞いているこちらも、仕事帰りにビール1杯飲んだせいか目蓋の上下がだんだんくっついてくる。
二人目、春風亭鹿の子さん。亡くなった柳昇師匠の弟子だった、女性の噺家さん。今は小柳枝門下に移っている。
この人は、しばらく前に末広亭の深夜寄席で見たことがある。そのときの印象は、かわいい顔して男の客をチクチクと刺すような、小悪魔的な人(言い過ぎかな)。
今回は、電車の中で化粧をする女性のまねをしたり、会場相手にオジサン度チェックを始めたり、まあ、言えばベタなつかみだけど、扇子をビューラー代わりにまつげを引っ張る仕草などは、自分を捨ててる感じがしてよかった。
ネタは新作で、カラオケボックスでの課長と新入社員やお局さんとのやりとりを歌って踊って。柳昇師匠みたい。
三人目、春風亭美由紀さんが三味線を片手に登場。
長唄の一節がCMで使われているということで、プロミスや桃屋のCMと絡めて紹介。
よく知られている俗曲でも、「梅は咲いたか、桜はまだかいな」までは分かっても、その後が出てこない。もちろんぼくもそうです。
さあ皆さんで歌いましょう、ということで、今度は「東京音頭」を。ハアー、踊り踊るなら、ちょいと東京音頭、ヨイヨイ。1番の歌詞まではいいけど、2番になると客席からの声がぱったり止まる。さて皆さん、東京音頭の2番、3番って歌えます?スワローズファンは知ってるのかな。 
いつも美由紀さんは踊りで締めるんだけど、今日のこの舞台は天井が低いから踊りは無しかな、と思っていたら、ちゃんと踊ってくれて満足。
トリは春風亭小柳枝師匠。
聞き取れないほどの小さな声で話しはじめて、どうしたんだろうと一瞬思ったくらいだけど、もしかしたら、そうやって客との間合いを計っていたのか。
東京の寄席事情の説明をしながら、寄席に来た団体客が番組表の名前と高座の噺家の顔をいぶかしげに見比べるときの表情を演じるうまさ。大声を張り上げるでもなく、きわどいことを言うわけでもないのに、時間が経つにつれて、普段それほど寄席に来ないだろう客を確実につかんでいくのが分かる。
ネタは時そば。この前の深夜寄席で聞いた瀧川鯉之助さんとは違ってオーソドックス。ヘンなくすぐりは入れない。それなのにポイントポイントでちゃんと笑いをとる。
そばを食べる所作では自然に拍手が出るし、最初の男(1文せしめたほう)がそば屋をほめるくだりなど、口調は速いんだけど、それが不自然な速さじゃなくて、ちゃんと江戸っ子の威勢のよさになっている。
ちょっと抜けたほうの男が、最初の男のセリフを反芻して1文せしめたことに気づくくだり、しっかりと時間をとって説明していたのは、慣れない客への気配りもあるのだろうか。
小柳枝師匠の噺が終わって帰ろうとすると、カフェの中にすっかり洋服に着替えた鹿の子さんがいる。着物姿でない、普段着の鹿の子さんを見るのはなんだか気恥ずかしかった。ぼくが恥ずかしがる理由は何もないのに。

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