icou(旧TABULAE)に寄ってストリートピアノのチラシの補充。その後近所を少し散歩。

雨に濡れた時期外れの朝顔が美しい。

ヒガムコに寄ってチラシの減り具合の確認がてらコーヒーで休憩。マスターとカウンターの相客との雑談が思いの外弾んで、気がついたらいい時間。

次の予定の豊洲シビックセンターは初めて行く場所で、江東区だから隣の区だろうとたかをくくっていたら、案外時間がかかることに気づいて冷や汗。曳舟からだと、曳舟→清澄白河→月島→豊洲、と地下鉄を二回乗り換えて1時間近くかかる。同じ江東区でも亀戸あたりとは全然違う。

なんとか間に合った。もし曳舟で一本遅い電車に乗っていたら遅刻していたかも知れない。

今日は手妻。手妻(和妻とも言う)は和風のマジックで、私は寄席演芸の色物のひとつとしての手妻は見たことがあるけれど、手妻が主役のホール公演というのは初めて。

藤山大樹さんという人は知らなかったが、師匠筋をたどると、寄席に出演している松旭斎の屋号のマジシャンともつながりがあるようだ。着物の袖のような袋から卵を取り出したり、紙の蝶を飛ばしたりするマジックは、寄席でも見たことがあるが、邦楽器を取り入れたバンドの生演奏をバックに、次々に和傘を取り出したり、扇子を開いて松羽目に見立てたりするマジックは、ホールならではのスケールの演目だろう。大きな扇子や傘が手許からどうやって出てくるのか、目を凝らしていても、まったくわからない。寄席で見るマジックと基本の技術は同じなのだろうが、見せ方でずいぶん印象が違うものだと思うと同時に、逆に寄席でマジックが色物扱いされているのがもったいないという気もしてくる。

次々に面を付け替えていく演目があった。瞬く間に白拍子が老女に相貌を変える様を見て、先日の文楽の一場面を思い出した。『嫗山姥』の中で、桐竹勘十郎さんが操る遊女八重垣のかしらが、「娘」から「角なしのガブ」に変わるのだが、どんなふうにかしらを付け替えているのか、まったくわからなかった。

言ってみれば、文楽も歌舞伎も「見世物」であるという点では、手妻と変わらない。今のようにジャンルが確立する前には、未分化な時代があったのだろう。

舞台上で大樹さんが言っていた「妖怪手品」という用語は知らなかったが、江戸期にあった妖獣等を出現させる見世物のことらしい。確かに怪談物の芝居等で見られるスペクタクルは、マジックやイリュージョンと地続きだろうと思う。

豊洲から銀座一丁目で一旦外に出て、銀座線に乗り換え、浅草へ。

浅草から対岸の隅田公園に行くのに、近頃鉄橋に沿ってできた、すみだリバーウォークを通って行ってみようと思うのだが、浅草側の入口がわかりにくい。

ようやく入口を示す看板を見つけた。あまりにも地味な看板なので見落としていた。余程浅草からスカイツリー方面に観光客を逃がしたくないのだろうと勘ぐってしまう。

隅田公園には映画の野外上映を見に来たのだが、上映時刻までまだ1時間余りある。地元の店が飲食のブースを出していると聞いていたので、飲み食いしながら待っていようと思っていたのだが、この雨では芝生にも座れないし、屋根のある場所もない。やむを得ず一時離脱。近くの直やさんのお店「キセカエ」に初めて伺って、しばし雑談。

一本目は『SECTION 1-2-3』。この映画は前にも見たはずだが、すっかり内容を忘れていて、そうだったと思い出しながら見ていた。この映画は、2007年の向島の風景を記録しているとともに、当時の実際の向島とも少し違う、ある種の並行世界を描いていると思う。そして、制作から10年余りが経って、映画の終わり近くのSF的な描写と、その後の現実の世界との間で、新しいズレが生じている。要するに、映画の見立てよりも急速に社会の衰退が進んだことで、近い過去から見た、もう実現しないだろう未来のイメージがスクリーンに映し出されることになった。

二本目は『人生フルーツ』。劇場で見逃していたので、今回の上映はいい機会だった。登場する老建築家は東大出のインテリだが、とにかく自分の手を動かす人だ。自宅を設計し、畑を耕し、軽妙なイラストも描く。もともとは航空機の技術者だったらしいが、エンジニアというより、アルチザンという趣さえある。90年余りの人生の間には、当然戦争体験がある。映画の中に台湾の近現代史がこのように織り込まれているとは思わなかったが、老夫婦のほのぼのとした日常の描写に留まらない深みをこの映画に与えている。ただし、それ以上政治的、思想的な問題に立ち入らないのは、やはりこの人が手の人だからだろう。昔の人は本当によく手が動いた。ふと、私の祖父を思い出す。この映画の老建築家より一回り程上で、教育も境遇もまったく違うけれど、手の人だったという点では、懐かしく思った。

幸い、上映中は雨が落ちてこなかった。久し振りにビールを何本も飲んで気が緩んで、ラーメン屋に寄って帰った。11,894歩。

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