京橋の東京国立近代美術館フィルムセンターに行ってきた。
春風亭柳昇原作・出演の映画「与太郎戦記」が、「特集・逝ける映画人を偲んで 2002-2003」というプログラムのひとつとして上映されるという。
2002年1月1日から2003年12月31日までの2年間に逝去した映画人を追悼する特集ということで、この作品の上映で追悼されているのは、もちろん春風亭柳昇師。


柳昇師匠が亡くなったのはいつだっけ。なんだかずいぶん前のような気もする。
大きいことをいうようだが、春風亭柳昇といえば、いまやわが国にはひとりもいなくなってしまった。
実は、このフィルムセンターで映画を見るのは、これが初めて。
この場所自体は、これも亡くなった大辻清司の写真展を見にきたことがあるけれど、いつぐらいのことだっけ、と思ってカタログを確かめたら、1999年の開催だったか。こっちのほうは、もっと最近のような気がしていたのだが、そうでもなかった。
大ホールの中に入ると、思ってたより広くてキレイ。椅子も大きくて座りやすい。
さて、この作品は、自ら従軍経験のある柳昇師匠の軍隊生活についての手記を原作にした映画で、1969年の制作になる。
主役の秋本与太郎を演じるのは、フランキー堺。この人も亡くなって久しい。そうか、フランキー堺って、柳昇師匠より先に死んでるのか。
柳昇師匠はワキで軍医として出演するほか、当時の人気落語家が総出演、ということらしいが、いかんせん、もう36年前の映画でしょう。キャストを見ると、まだ生きてる人でいっても、三遊亭金馬、三遊亭歌奴(今の円歌師匠ですよね)、月の家円鏡(同様に円蔵師匠ですよね)の各師が出ていたらしいが、正直言って、誰が誰か、よく分からなかった。ひょっとしてあれがあの人だったのかな・・・、という程度。さすがに柳昇師匠は分かったけどね。この頃で50歳くらい?
基本的にはコメディーだから、さまざまな軍隊生活のエピソードがカリカチュアライズされて描かれているのだが、笑いにくるまれている分、ふとしたシビアな部分も気にかかる。
入営直後のいかにも与太郎らしい失敗談から、仲間や上官に得意の落語で歓心を得たり、新婚夫婦の部屋を覗こうと偵察に出たりと、結構、ほのぼのとした営舎での生活。
それが一転、後半部では秋本一等兵はいよいよ戦地に送られる。
スクリーンの上端を、静かに行軍する隊列。その隊列を見上げるように、荒寥とした枯野を大きく切り取った構図が印象に残る。
東京国立近代美術館フィルムセンター
http://www.momat.go.jp/FC/fc.html
特集・逝ける映画人を偲んで 2002-2003
http://www.momat.go.jp/FC/NFC_Calendar/2004-12-2005-02/kaisetsu.html

コメントを残す