「与太郎戦記」の話の続き。
ところでこの映画、最初から最後まで、下ネタというか、セックス絡みの話ばっかりなのだ。
大体において、この映画に出てくる女性は、女給にせよ、遊女にせよ、慰安婦にせよ、ほとんどが男性のセックスの対象として描かれている。
唯一、自立した女性としてキャラが立っているのは、戦地での看護婦ということになる。
別にぼくは、特段モラリストでもフェミニストでもないけれど、こうした女性の描き方には、さすがに違和感があった。慰安所の場面など、今ならコメディーとしては描けないだろう。
ふと疑問に思うのは、当時の軍隊ではマスターベーションの習慣がなかったのだろうか。あるいは、軍人たる者マスターベーションなどしてはいけない、貴様それでも軍人か、というような規律でもあったのだろうか。
くだらない話で恐縮ですけどね。
でも、男色の場面はあるのに、オナニーが出てこないなんて、ちょっと順番が違うんじゃないかと思う。
まあ、営舎では雑魚寝で、戦地ではいつ敵が攻めてくるか分からないのにそれどころじゃない、ということなら致し方ないけれど、でも、もしその問題がクリアされていれば、極端な話、従軍慰安婦の問題も起きなかったんじゃないだろうか?
ともあれ、軍隊というのは、つくづく男ばかりの集団で、これはやっぱり異常なことだ。
今の軍隊ではどうなのだろう。自衛隊や米軍では女性の兵士も結構いるようだけれど。
もうひとつ、これもヘンな話で恐縮だけど、男が童貞であることが、ある種の美徳として扱われているということに、大げさにいえば、新鮮な驚きがあった。
数々の誘惑やチャンスにもかかわらず、結局、与太郎は童貞のまま戦地に赴いて、敵の銃弾を受けて野戦病院に送られることになるのだけど、そこの従軍看護婦に一目ぼれをした与太郎は、彼女に対して、自分の童貞の操を捧げたい、というような内容のラブレターを送る。
要するに、自分が童貞であることを好きな女性に堂々と宣言して、しかも、それがプラスのポイントになると考えている。今だったら、もし女の子にそんなメールを送ったら、ちょっとマズイんじゃないだろうか。
むろん、ラブレターのシーンはコメディーとして描かれている。したがって、この映画が制作された1969年の時点では、すでに童貞の美徳が笑いの対象に変っていたということもいえるが、さらに過去にさかのぼれば、童貞であることが価値をもっていた時代もあったのだ。それは、処女の美徳という価値観が存在した時代があったように。