「毎度申し上げてることですが、われわれお父さん族の味覚は、多く郷愁のようなものから成り立っているのかもしれない、という、これはまぁ私の持論なんでございまして・・・」
「品目で言えば、そういう、子供の時に旨いと思ったのがコビリついたまま今日でもウマイナァと思ってしまうのは、握り鮨、カツライス、それに塩煎餅でありまして、何のかんのと、結局、のべつ食べたがっておりますヨ」
(「ご意見無用、関東塩煎餅仕入れ旅」『ノーテンキ旅 小沢昭一的こころ』)


かように小沢昭一さんも言っているわけでありますが、おんなじようなことを別の文章で書いているのも見たことがあるような気がします。
人がおいしそうにしているのを見ると、自分も食べたくなるのが人情というヤツですが、とはいえ、私の貧しい懐具合では、そうしょっちゅうお寿司(回らないやつね)は食べられないし、トンカツはやっぱりカロリーが気になる(っていいつつ、こないだ目黒のとんきで食べちゃったけど)。
懐具合もカロリーもさほど気にせず、心置きなく買い食いできるのが塩煎餅というわけなんですが、さて突然ですが、この塩煎餅という言葉から、皆さん頭の中でどういう物体を思い浮かべているんでしょうかね。
辞書を引いてみましょうか。
しおせんべい【塩煎餅】
米の粉をこねて薄くのばし、しょうゆで味をつけて焼いた菓子。草加煎餅など。
(新明解国語辞典)
塩煎餅っていうから、塩でもまぶしてあるのかと思ったら,醤油味なのね。
「草加煎餅など」って、ああ、例の。丸くて、堅くて、茶色くてところどころ焦げ目のついたような。ああいうタイプのおせんべいのことを塩煎餅っていうんだ。なるほどねえ。
あれ、もしかして、都内近郊出身の皆さん、あいつはそんなことも知らないのかよ、なーんて思ってませんか。
そうです。煎餅とひとことで言っても、地域によって結構違いがあるようなのですね。
どうやら上に書いたような塩煎餅は関東のもの。関西で煎餅といえば、小麦粉を原料に甘く焼き固めたもののほうが一般的みたい。例えば、瓦煎餅のような。
私が生まれ育った富山県というのも、文化的には関西圏の端っこになるのか、やっぱり小麦粉で作った甘い煎餅のほうがお馴染みだったように思う。
そういえば、子供の頃は瓦煎餅をよく食べてた気がするなあ。気が付くとうちにあって。あれは誰が買ってきていたんだろう。死んだおばあちゃんかな。ピーナッツが入っててね。それから、カルシウム煎餅ってやつ。懐かしいなあ。今でも売ってるのかな。
さて、蒲田育ちの小沢昭一さんにとって、おせんべといえば、もちろん塩煎餅。
冒頭で引用した文章では、小沢さんはあのあと、北は西新井大師から南は羽田の穴守稲荷まで都内を駆け回るわけですが、少年時代から筋金入りの塩煎餅好きの小沢昭一さんが、正調関東塩煎餅を求めて東奔西走しているくだりを読んでいると、だんだんぼくも、宗旨変えして塩煎餅が食べたくなってくる。
私も小沢さんにならって、旨い塩煎餅を仕入れに参りましょうか。
といって、さっそく西新井に行くのもいいんですが、ふと周りを見渡すと、この墨田区は本所界隈、けっこうおせんべいの類のお店が多いのに気づくのですよ。
まず代表格が、亀沢は北斎通り沿いの東あられさん。
店名からわかるように、このお店のメインはおせんべじゃなくてあられなんですが、ところで皆さん、煎餅とあられとおかきの違いってお分かりですか。
なーんて私も、東あられさんのサイトを見て勉強しました。下にURLを挙げておくので各自お調べください。
ここはあられだけじゃなくて、おせんべもおかきもかりんともおいしい。お店で揚げたての揚げおかきはさくさくとして絶品ですね。おっとこれもカロリーが。。
東あられさんのような大手じゃなくても、商店街にひょっこり手作りのおせんべ屋さんが並んだりしているわけでありまして、例えば、石原の三河屋さん。ここでも何度か買ってますよ。おせんべ屋の隣に息子夫婦が最近イタリア料理店を開いちゃって、というのは余談でありますが。
もちろん普通のスーパーやコンビニでも買います。夜中に突然塩煎餅が食べたくなった場合など、さすがに商店街のお店は閉まってますからね。
というわけで、にわかにやってきた塩煎餅マイブーム。
これというのも、もちろん小沢昭一マイブームから来ているのでありまして、次回はいよいよ核心に迫るお話になりますかどうか、この続きは、また明日のこころだァー!
東あられ
http://www.azuma-arare.co.jp/

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