あえて露悪的にいうこともないのだが、女の子が隣について一緒に酒を飲む店、要するにキャバクラやパブの類には、いっとき、さんざん授業料を払わされた。
一番ハマっていたのは、もう5年程前か。今から思っても、本当に狂ったように通っていた。
当時勤めていた会社には、同世代の遊び好きな連中が周囲にたくさんいたし、たまたま手元に小金があったせいもある。
ぼくが行ける程度の店だから、値段もたかが知れているのだが、それでも週に何度も、いそいそと出かけるようになると、さすがにかなりの出費になる。
当時だって、自分でもこのハマリ方はおかしいだろ、と思いつつ通っていたのだ。そこには、周りに対する妙な自己演出の気分もあったのだろう。
前の会社を辞めてからは、まるで憑き物が落ちたみたいに、そういった類の店に行くことは、まあ、なくなった。
言ってみれば、現役引退というか、退役軍人といおうか、そんなような気分ですか。


ある人たちと飲んでいて、最初はいつもの居酒屋で、三人で飲んでいたのが、年長の人が帰るというので、ぼくと、ぼくよりいくつか若い男と二人になり、じゃあ、まだ時間も早いし、この近くでもう一軒行こうか、ということになった。
最初の店で結構飲み食いしたので、今度はショットバーみたいなところがいい。
が、正直、この近辺は不案内なので、店は彼に任せて、最近出来たビルの中にある、アイリッシュパブのようなところに入った。
駅の反対側には、本当に久しぶりに来たのだが、さほど遠くない記憶の中のランドスケープとは全然違う光景が広がっていて、なんだか、気持ちにまとまりのつかないまま、窓の外の景色を見ていた。
ビールを1パイント飲んでいるうちに、どういう雲行きだか、話柄が、例の女の子のいるようなお店のことになってきた。
その相手が、まあ、ごく真面目な男で、その類の店には行ったことがないというのですよ。おそらく、本当なのだろう。
そういう柄じゃないのにな、と思いつつ、一般的なシステムやサービスの内容などを説明しているうちに、隔靴掻痒といいいましょうか、なんだか、だんだん、じれったくなってきた。
だったら、まだ時間も浅いし、ちょっと行ってみようじゃないですか。
といっても、このあたりで知っている店でもあればいいんだけど、全然この辺は不案内で。
それで結局、当時ぼくがイカレていたあたり、高田馬場のさかえ通りまで彼を連れ出すことにした。バカですね。
さかえ通りに着いて思ったこと。あれ、客引きがいない。前だったら、こんな格好で歩いた日には、あちこちから客引きの声がかかったものなのに。
客引きって、うざったいこともあるけれど、やりとりを楽しむようなところもあって、いなきゃいないで寂しいものです。
いぶかしく思いつつ、通りの奥にどんどん入っていくと、ようやくそこで、客引きがひとり、なれなれしく付きまとってきた。知らない名前の店だが、値段を聞くとやたら安い。
が、まあ、ぼくも退役軍人の身分だし、知らないところに不慣れな人を連れて入るのは、さすがに、はばかられた。
昔から営業している、ある店の前に、地味に店員が立っていたので、そこに入ることにした。1時間1人5千円。そんなものでしょう。
隣についた女の子に、客引きがいないね、と聞くと、今年の4月から石原都知事が客引きを禁止したんだって。
あとで調べると、そういう条例が施行されていたらしい。ふーん、知らなかった。
むろん、1時間は何事もなく過ぎた。
ともあれ、いつどこに行っても、何かしらの勉強にはなるものです。
例えば、歌舞伎町を視察した小泉首相、風俗店の看板を見ながら、新宿区の女性区長に対して、
「ヘルスってのは、いったい何ですか」
とか何とか質問したらしいというお噂もありますが、あんまり世事に疎くなるのもどうかということですな。
私も、先日来の小沢昭一マイブーム以来、おスケベ方面も、心を入れ替えてもう一度、というつもりも、多少は、あるのですよ。
いつの間にか、だんだん口調が変わってきておりますが、この続きは、また明日のこころだァー!(続きません)
都の「客引き禁止」条例、1日施行・ビルオーナー摘発も(NIKKEI NET)
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20050401AT1G3102531032005.html
こういうことだったんですな。

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