今さら万博の話もどうかと思うのだが、これはつい先週のことだからお許し願いたい。
ICCのローリー・アンダーソン展で「山の中に隠されている」という映像作品を見てきた。
この作品、愛知万博のために作られたそうなのだけど、どこかのパビリオンででも上映してたのかな?
と思って検索してみると、そうか。愛・地球広場でやってたのか。
ローリー・アンダーソン SHOW〜山の中に隠されている〜
http://www.expo2005.or.jp/jp/D0/D4/detail/detail_AI0508XA70201.html


しかし愛・地球広場?あんな大きなスクリーンで?こちらはICCシアターの小さなスクリーンでしか見ていないけど、小さいところで見たぶんでも相当なものでしたよ。映像も音も、短いながらきっとお金かけて作っているんだろうなあというクオリティを感じる。
屋外の大スクリーンでは趣きも全然違うのだろうが、どんなふうに見えていたのか興味深い(誰か感想書いてないかな?)。きっと結構な見ものだったんだろうなあと思う。
全体に映像はどことなく日本ふうなのだけど、では、どこがどう日本ふうかと聞かれても困るので、出てくる人もいろんな人種の人が混ざっているし、なにか場所が特定できるような風景や事物が映っているわけじゃない。
森や木や植物や動物やヒトの扱い方、色味のコクとか、そういったものの全体から漂ってくるのかなあ、日本ふうが。どこか無国籍ふうなところも日本ふうだし。全然根拠ないんですけど、なんとなく平安だなあと思って見ていました。
全篇に詩の断片のようなテキストを合わせてある。さすが愛知万博向けに作っただけあって、ちゃんと日本語のテキストのことを最初から考えて作られているという感じ。英語中心的に作ると、日本語のテキストが字幕みたいになりそうじゃないですか。そうじゃなくて、画像の中で日本語のテキストも英語のテキストと相応の存在感があって、一体感を持っている。
が、それゆえに、英語と日本語って、やっぱり違う言葉なんだなあという、当たり前のことを思ったりもしましたが。
今回のICCの展示のほうでも、展示室のあちこちに日本語や英語の手書きのテキストをちりばめてあって、日本語のテキストについては、ローリー・アンダーソン自身は日本語が分かるわけじゃないけど、日本人スタッフの人と一緒になって壁に書いていったそうだ。展示作業の際の情景が目に浮かぶ。
が、こんなふうに言葉のウエイトが大きいと、日本語での表現について、アーティストはどこまでコントロールしきれているのだろう。特に展示のテキストは手書きだったから、余計にそう思う。いろんなニュアンスが介在してくる余地があるのでは・・・。そういう予期しない介在を面白がる見方もあるのかもしれないけど、この作家はあんまりそういう人ではないのでは?とも思う。
というのは、ICCのロビーで、7月に行われたアーティスト・トークの録画を見ていたら、いきなり冒頭から会場の照明の加減やマイクの音量をやたら気にしているのが目に付いて、この人、かなり気を使う人というか、神経質なところがあるのかなあと思っていた。作品についてはどうなのだろう。
なお、彼女のテキストの日本語訳については、芸大の女性の先生で、昔から彼女の翻訳をずっとやっている人が今回のICCでの展示にも関わっているそうで、本人が全く知らない人がバラバラに翻訳をやっているわけではないようだ。もしかすると、この映像作品の日本語テキストにもその人が携わっているのかな。
ただ、言葉を使っているといっても、映像に添えられているのはもっぱら書き言葉で、喋り言葉ではないのですね。個人的には、作家の声を聞きたいという思いもあるのだけど、声までバイリンガルにするのは難しいのかな。
この映像作品と併せて上映していた「トーク・ノーマル」という作品(1987年に彼女が東京で行なったレクチャーを記録したヴィデオだそう)の中で彼女が言っていたのだが、以前、日本でライブを行った際に、日本語で歌おうと考えて、あらかじめ日本人に歌ってもらったテープをパーフェクトに覚えてライブに臨んだのに、ある観客から、あなたは英語ではクリアに歌うのに、日本語ではどもるんですね、という感想を受けたそうだ。それで、後で分かったのは、実はその日本語のテープを歌った人がどもる人だった、というエピソード。
しかし「トーク・ノーマル」は長いですよ。88分もあるんだから。途中で何度もウトウトしちゃいました。
その点「山の中に隠されている」は短くてよいですね。このままもう少し見ていたい、というところで終わってしまうのがよい。どこかで再上映とかDVD化とかされないのかな?
ローリー・アンダーソン「時間の記録」
http://www.ntticc.or.jp/Archive/2005/THERECORDOFTHETIME/index_j.html
しかしこの「時間の記録」ってタイトル、今さらながら、あんまりピンとこないんですけど。
原題の”THE RECORD OF THE TIME”をそのまま訳したんでしょうが、なんかね。いわく言いがたいのだけど・・・。

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