ちゃんこ霧島のちゃんこが、いわゆる「ちゃんこ」という感じがしたと書いたけれど、そのいわゆる「ちゃんこ」ってどんなちゃんこだよ、と聞かれたら、言葉に詰まってしまう。
ただ、大抵の人は頭の中に漠然とした「ちゃんこ像」みたいなものがあるのではないだろうか。味付けとか、具とか、食べるシチュエーションとか。
(しかしひとつの文章の中にこれだけ何度も「ちゃんこ」って言葉を使ったのは初めてだな)
ここで、正しいちゃんことは何かについて、もう少し考えてみることにする。
例えば、ちゃんこ霧島のチラシにはこういう記述がある。
ちゃんこは、相撲料理の総称で
力士の間で食べる食事の事を
「ちゃんこ」とよびます。
相撲部屋によって「ちゃんこ」は異なりますが、
多くは、鳥、魚、野菜などを鍋にして食します。
「鳥、魚、野菜などを鍋にして」食べるだけなら、どこにでもある鍋物と変らないわけで、やはりここは、お相撲さんが食べている、あるいは作っている、という点が大きいのだろう。
パールホテルの和牛ちゃんこが今ひとつのように感じられたのも、これは所詮ホテルの料理だろ、やっぱりちゃんこはお相撲さんのやってる店じゃないとねー、というバイアスがかかっていたことは否めない。
ドイツ文学者で、長く横綱審議委員会の委員長も務めた高橋義孝の随筆から引用する。
さて相撲取りがごそごそやって天丼を作ると、これは天丼ではなくて、歴とした「チャンコ料理」である。つまりチャンコ番が作ればトンカツであろうと天丼であろうと、すべて「チャンコ料理」であり、チャンコ鍋はそのチャンコ料理の一種にすぎないというのである。チャンコ料理の定義には諸説があって定説を得るに至っていないが、今紹介したのが恐らく穏当なチャンコ定義らしい。チャンコはチャン、お父ッちゃんのチャンで、コは愛称または縮小の接尾語であろう。そこで料理番のお父ッちゃんの作る料理がチャンコ料理ということになるらしい。
この定義は、上に挙げたちゃんこ霧島の定義とも矛盾はないだろう。
つまり、正確を期すなら、単に「ちゃんこ」というのではなく、お相撲さんの作る料理の総体をいうなら「ちゃんこ料理」、そのうちの鍋物を指すなら「ちゃんこ鍋」と呼び分けるべきということになる。
ちゃんこ料理屋でコースを頼むと、鍋が出てくる前に前菜も出ればお刺身も出る。
そういう鍋物以外の料理も含めて、ちゃんこ料理ということか。

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