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これも早いうちに書いておかないと忘れちゃうよ。
息せき切って鈴本演芸場のホールのドアを開けると、お、まだ幕が上がっていない。
場内はすでに7、8割方ほど埋まっているように見える。あるいはもっとか。頭を下げて椅子の間を通してもらって、適当な場所に座席を確保。
程なく幕が上がって前座さんの登場。
後から演芸名鑑で調べると、志ん駒門下の古今亭駒次さんだったのかな。
演目は「転失気」。


口を大きく開けてハキハキと喋っているのがすがすがしく、好感が持てる。
ただ、最後のあたりになると、聞いていて話の筋がうまくつながっていかない箇所があった。なんだろう、口から出る言葉をうまくコントロールしきれていないような感じか。
続いて、正蔵門下、林家たけ平さん。そういえばこの人は二つ目に上がったんだな。
ずっと林家錦平さんを追いかけていて、前座で喋るたけ平さんの姿を何度か見ていた。
まだ若い(と思う)好青年(と思う)なのに、しっかりと落語を演じていて、感心して聞いた記憶がある。さすが、錦平さんに付いていることはあるなと思った。
今回の演目は「鮑のし」なのだが、本題に入る前に、しばらくまくらをふる。
たけ平さんのまくらというのは、初めて聞いた気がする。落語界の細かいしきたりは知らないが、やはり前座のうちは高座で余計なことは喋らせてもらえないのだろう。
それにしても、たけ平さんがフリートーク風に笑いを取ろうとするのを聞いていると、なぜか面映い。ときどき勢いあまってつっかえているのも、どこか初々しい。
ひとつメモから起こしておく。健康ランドの薬湯は茶褐色ににごっているけれど、絶対誰か中でおしっこをしているはず。というのは、実は自分もしているから。効能書きに8種類の漢方が入っていると書いてあるが、自分がおしっこをしたから9種類になった、云々。書くとつまんないね。聞いているとクダラナクて結構笑えたんだけど。
「鮑のし」のほうは、亭主の稚気が勝ちすぎていたのか、一瞬、女房というより母親と子供の会話みたいに聞こえた。そういうものなのかも知れないが、あるいは演じ分け方の問題なのかな。
しかし、こうやって前座さんと二つ目の落語を並べて聞いてみると、それぞれにハードルがあるものだなと思う。もっとも、そのハードルに前向きに挑戦しているからこそ、そう聞こえたのだろう。
さあ、待ってました、錦平さんの登場。
演目は「佃祭り」。実は、この噺は、先日の三平堂落語会でも聞いた。
そのときに聞いたのと、ほとんど演出も変えていないようだ。
と思いながら聞いていたら、船がひっくり返って死んだ(と思われていた)旦那にお悔やみをいう場面で、三平堂のときは月番は与太郎だったのに、今回の月番は噺家の三平さんかよ!ヤラレタ!
先日もそうだったが、噺のバックに祭囃子の演奏が入るのが印象的だった。
さて錦平さんが引っ込んで、続いて種平さんの出番、というところで、名ビラをめくりに現れたのは、あれはこないだ三平堂で見た林家ぼたんさんではないのか。
が、名ビラ立てを持ったまま、キツイ表情をぴくりとも変えずに会場を射るように見ているから、なんだかあのときと別人のように思えた。
舞台の上から客の出入りの様子を見ながら、種平さんの出番までの間をはかっていたのだろうか。それにしても、あの冷たい仏頂面は、なんとかならなかったのか。
種平さんの一席目は「ぼやき酒屋」。
以前、池袋演芸場に林家正蔵襲名興行を見に行ったとき、春風亭小朝師がこの噺を軽く演じていて、最高に面白かった。
この噺では、最近の歌と昔の歌を対比させてボヤくわけだが、誰のどういう歌を取り上げるかで演者のセンスが問われる。また、それがウケるかどうかは、客との兼ね合いもあるだろう。
小朝師のを聞いてしばらくしてから、末廣亭で別の人が演じるのを聞いたが、そっちはあまり感心しなかった。
今回の種平さんの「ぼやき酒屋」の内容は、小朝師のとほぼ同じ。やっぱり同じ一門だから?小朝師の軽やかさはないけれど、噺家さんらしい野放図さは種平さんのほうがあるかも。
噺のつかみで、種平さん「酒の好きな人が、夢の中で・・・」と言おうとして、「夢の好きな人が・・・」。
種平さん曰く「大丈夫、これはマクラだから」
多分、こういうところがこの人の魅力なんだろうと思う。ある意味、林家っぽいというか・・・。
一方の錦平さんは、三平一門にしては、古典落語をしっかりとやる人。そんな二人が一緒に会をするというのも面白い。
種平さんが高座に上がると、客席から「待ってました!」「かっこいい!」だの、やたらと声がかかる。錦平さんが少しかわいそうなくらい。いやいや、私は錦平さんをずっと待ってましたよ。声には出しませんでしたが・・・。
そういえば、今回の二人会のトリ、錦平さんの二席目が始まる前に、種平さんの贔屓の客が結構帰ってしまったようで、そのことを錦平さんがボヤいていたのもおかしかった。もう少しガマンしていましょうね。

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