今回のAAF学校は水上アートバスの話。
2002年の第1回から順を追って、水上バスの中でのダンス・パフォーマンスのビデオを上映。いくつかのビデオは前にも見たな。多分、去年のAAF学校でだったと思うけど。
ぼく自身は、ナマで見たのは去年のほうほう堂のパフォーマンスだけ。このときのことは前にも書いた。
改めて通しで見ると、いろんなダンサーが、あれこれと手を変え品を変え、船内のパフォーマンスに臨んでいる。小道具を使う人、使わない人。一人で踊る人、二人で踊る人。衣装に凝る人、凝らない人。客と絡む人、絡まない人。
念のため、これらの違いは、必ずしもダンサーの個性によるものだけではないようで、特に初期においては、事前に水上バス会社から提示された制約も大きかったという。それを、毎年の試行錯誤で自由度を高めていった経緯があるようだ。
加藤種男氏がコメントで触れていたが、確かにぼくも、大道芸的だと思った。加藤さんは大道芸はお嫌いなのだろうか?
ぼくは小沢昭一さんの芸能の本を読んで感化されてしまっているから、どうしても大道芸という言葉には食いついてしまう。
さあ、今、大道芸といわれているものを現役でやっている人たちは、どういう人が多いのだろう。野外での芸一本でメシを食っている人は、どれくらいいるのだろう。不勉強にして知らない。
時折、繁華街や公園で、ジャグリングや演奏をしている人たちを見かけることがある。東京都公認のヘブンアーティストなのだろうと思う。ああいう人は、あれが本業なのかな。それとも何か、他にメシのタネがあるのかな。
今年の正月、向島のすみだ郷土文化資料館に、浅草雑芸団を見に行った。その日は風邪気味で調子があまりよくなく、また大雨の日で、どうしようかと思ったのだが、この人たちのことは前から気になっていたのだ。
正直言って、雨天の資料館の1階で、天井の高さを気にしながら演じる春駒や曲芸は、少々期待はずれだった。あれが、快晴の浅草で見ていたら、また印象は違っていただろう。ぜひ、もっといいコンディションのときに見てみたいものだ。
本当は、大道芸というものは、どこか公共の施設で、何時何分からこれをやりますと言われて、いそいそと見に出かけるようなものではないのだ。
通りすがりの者が、不意に目をやった芸の力に引きずりこまれて、しばしの間、大道芸人の前に立ち止まる。そして、それぞれの感興に応じて、いくばくかの金を払う。むろん、気にも留めずただ通り過ぎる者もいる。というか、それがほとんどだろうが。
さらに言うと、そういう大道芸は、えてしてお上の許可はもらっていなかっただろうね。ヤクザへのみかじめ料は払っていたかもしれないが。
では、この水上アートバスはどうだろうか。
ダンス・パフォーマンスを目当てに、当日の水上バスに乗り込むダンスファン、アートファンと、そんなことにはまったく関係なく、たまたま乗り合わせた観光客とが、水上バスの中ではっきりと分かれているのは確かだろうと思う。
前者のダンスファン、アートファンは、いわば、大道芸を建物の中で、決められた時間に見に行くようなものだね。舞台は水上バス、周りに観光客という趣向は一風変わっているが、言ってみれば、それはそういう道具立て、舞台装置ということではないか。非日常的な、異化効果をもたらす演出。
では、そんな道具立てにされてしまっている観光客にとっては?
これが本当の大道芸だったら、もっと観光客を挑発すべきだろうね。あの手この手を使って、興味のない客を振り向かせ、楽しませ、そして、カネをふんだくるべきだ。
芸がよければ稼ぎはいいし、まずければ食っていけない。昔の大道芸人は、毎日がそんな真剣勝負(この言葉は加藤さんも使っていた)で、また、そのような厳しさの中にしか、彼らには身過ぎ世過ぎの道がなかった。
いくらゲリラ的だのなんだの言っても、水上アートバスの中のダンサーは、AAFの枠組みの中で、取り巻きのダンスファンを前にして踊っている限り、絶対的な立場が保証されているのだよね。そして、水上バスの中に、ダンサーを頂点に、その下にダンスファン、さらに下に観光客、というヒエラルキーがいつしか出来上がっているようで、ちょっと怖い。なんとか、その壁を取り払って、ぐちゃぐちゃにかきまぜるようなことはできないか。
いや、当初、この水上アートバスの企画をゼロから始めるということは、ものすごいジャンプだったのだろうと思う。そのための労苦とエネルギーには充分な敬意を払ったうえで、さらなる大ジャンプが見たいものだ。これこそ言うは易しの類で、実際に今以上に何かやるのは大変だと思うけど。それをやれと見る側にけしかけるのが、AAF学校ということなのか?
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『AAF学校2007 vol.3「水上アートバス「ダンスパフォーマンス!」 ―5年間の歩み」』
会場: アサヒ・アートスクエア
スケジュール: 2007年04月5日 19:00?20:30
住所: 〒130-0001 東京都墨田区吾妻橋1-23-1 アサヒスーパードライホール4F
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AAF学校2007 vol.1の覚え書き »