関口グローバル研究会(SGRA)主催の第27回SGRAフォーラムに行って来た。
会場は、いつもの東京国際フォーラムではなく、今回は秋葉原UDXビル。
このビルは、一度メシだか酒だかで迷い込んだことがあるはずだが、いずれにしても、カンファレンスのあるオフィスフロアは初めてだ。
今回のテーマは、「アジアの外来種問題 ~ひとの生活との関わりを考える~」というので、幾分専門的な話になるのかな、と思っていたのだが、ぼくのような門外漢にもとっつきやすい内容で助かった。これは、講演者の先生方のお人柄もあるのだろう。
日本の各地の河川や湖沼に、ブラックバスが住み着いてしまった。おとなしく住んでいるだけではなく、先住者の魚を駆逐している。
このブラックバスの防除を法律に盛り込むべきか否か、かなりの議論になったということは、新聞報道などで聞きかじっていた。
正直、むずかしい問題だと思う。
以下、今日の話を聞いての、ぼくの感想を覚え書きしておく。
ひとつは、生物学の問題を、文化的、社会的な問題と混同して考えてしまうことについて。
外来種を駆除し、日本の在来種、固有種を守るという話が、文化的、社会的な排外主義や、もっと言えば優生思想に行き着きはしないか。一般の人たちに対して、手っ取り早く外来種の問題を説明しようとすると、いつの間にか話がそんなふうにすりかわっていそうで、ちょっと怖いのである。
これは、慎重に論じ分けるということしかないのだろう。
もうひとつは、そもそも、外来種は駆除しなければいけないのか?ということ。
講演者の諸氏も、また会場から挙がったいくつかの声でも、少なくともブラックバスに限れば、駆除すべきということ自体には異論はなかったように思う。
が、なぜ駆除しなければならないのか。少年の頃の魚取りをした思い出、昔の日本はよかった的なノスタルジーを持ち出してこられても、こちらは湖にもぐったこともなければフナ釣りをしたこともないので、あまりピンとこないのである。
となると、釣り人(+釣具業界)と、フナ漁師との間との利害得失で判断するしかないのか。そこまで一気に割り切ってしまうのも、抵抗がなくもない。
ぼくは、長い目で見て、この日本列島に住む人、住む生き物、そして、その風景が、次第に変わっていくのは止むを得ないと、基本的には考えている。じっさい今までも変わってきたし、これからだって、変わっていくものを無理に押しとどめるのは限りがある。
問題はその変わり方であって、あんまり急速に、急激に変化が進みすぎると、いろいろな面で混乱が生ずるだろう。
そこに住む人の顔や、街の景色だったら、それは人間の問題だから、入管政策次第で留学生の数が増減するみたいなもので、そこには人為的なコントロールが及ぶ。
が、生き物の場合は、必ずしも人間の思ったようには動いてくれないだろう。
故意でも過失でもいいが、思わぬ形で外来種が環境に解き放たれてしまったときに、いかにその繁殖をコントロール(場合によっては駆除)できるのか、まず、その技術を確立してほしいと思うものである。
そのうえで、スピードを調整しつつ、いろんな点で事なきを得ながら、ゆるゆると、変わっていくものは変わっていけばよいのではないか。
これだけ、日本中にブラックバスが住み着いてしまって、本当にこれから防除なんてできるのかよ、と思っていたのだが、話を聞いてみると、それが結構できるようなのである。
であるならば、バス釣りをしたい人はして、隣でフナ漁をしたい人はする、というふうに、諸事丸く収まってほしい。
とはいえ、毒虫とかサソリとかみたいに刺されると痛いとか、何か病気を媒介するとか、そういう生き物が入ってくるのは、なるべくなら御免こうむりたい。
が、これだけ人や物が行き来していては、いくら注意していても限度があるだろうし、ルールを守らない人だっているものだ。だから、いざ入ってきたときにはなるべく広まらないような研究を、生物学者の皆さんにはがんばっていただきたい。
うーむ。こういう話をすると、どうもご都合主義的になるなあ。おいしいものはいいけど、痛いのはイヤだとか。まあしょうがないじゃないの。
毒虫やサソリだって、どうしても入ってくるというんだったら、止むを得なければ即ち致し方ない。こちらもおとなしく暮らしますから、そちらもなるべく刺さないようにしてください、とお願いするしかない。
以上の話の留保その1。東南アジアでは、地域によっては、そもそも何がその地域の在来種で、何がそうでないのか。そういった生物学的な調査自体が十分に行われていないという。そのような状況にもかかわらず、どんどん外来種が持ち込まれている。
何よりも、まず現状の生物相の調査を行い、記録を残しておくべきだ、という生物学者の立場からの論旨は、それはそれで理解できる。
留保その2。ぼくが外来種排除原理主義者(?)的な人たちを冷ややかに見ていたのは、いまわれわれが食べているジャガイモもニンジンも豚も牛も、ぜんぶ外来種じゃないですか、という頭があったからだ。それこそ、もとをたどればイネだって外来種である(このことは、確か遠藤哲夫さんのブログを読んでいて、そうだなあと感じ入った)。外来種の排除を主張する人たちは、まず稲作から拒否してほしい、そんなふうに思っていた。
が、今日の話で多紀先生がちらっと触れられていたのだが、そうした野菜や家畜は、移入の前に、すでに人為的に飼いならされていた品種だ。が、ブラックバスやティラピアのような淡水魚の場合は、野生種をそのまま別の環境に移しているのである。
野菜とブラックバスを、必ずしもひとくくりにはできないと少し考え直した。
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『第27回SGRAフォーラム「アジアの外来種問題 ~ひとの生活との関わりを考える~」』
会場: 秋葉原UDX南6階カンファレンス
スケジュール: 2007年05月27日 14:30~17:30
住所: 〒101-0021 東京都千代田区外神田4-14-1 秋葉原UDX南ウイング6F