原美術館のヘンリー・ダーガー展。
思いのほか、お客が入っているのにまず驚いた。
それも若い女性が多い。
確かに、一見すると、女の子が好きそうな絵だとは思うのだけど。
ダーガー本人は、生涯生身の女性と交わったことはないとされている。
ま、いわゆる非モテですわな。
それが、作品を持ってきた途端、こんなにモテていることに戸惑う。
もしこの場に作家本人がいたら、彼女たちはかなり引くだろうなと思うと、軽く女性不信がきざす。


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2003年のワタリウムでの展覧会は見逃した。
世田谷美術館でのパラレル・ヴィジョン展は、確か見に行ったと思うんだ。だいぶ前のことなので記憶も定かではないけれど、デジャヴとかでなければ、そのときに、ダーガーの絵を見た、気がする。
今回、ダーガーの絵をしけじけと見つめて、感興を新たにした。
女の子の輪郭を、本当にトレースで描いてるんだね。青い線は、カーボン紙の色か。それを、鉛筆で補筆しているのがわかる。
ダーガーといえば、ペニスのついた女の子。ダーガーの描く女の子を見ると、写真や細緻なイラストからトレースしてるから当然だろうけど、顔の表情や体の線はリアルなのに、股間はいきなりちゃちい描き方をしている。まあ、股間はトレースする元ネタもないだろうから仕方ないけど、ペニスの有る無しよりも、そのリアリズムのレベルの混在が、なんか変。
やっぱり、こういう世界には、大人の女性というのは出てこないんですかね。
子供は永遠に子供のままですか。子供のままで死ぬしかないんですか。
そういえば、今回の展示には、内臓丸出しのグロい作品はなかったですね。
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ダーガーの作品は、アウトサイダー・アート、ということになっているけど、さて、アウトサイダー・アートって一体なんだろう。
例えば、ぼくが絵を描いたら、それはアウトサイダー・アートですかね。
美術のマーケットにのっかっていない絵ということ?
でも、今、ダーガーの大きな作品は2100万円もする(美術手帖に書いてあった)。
大体、この人は、自分のことをアーティストだと自覚していたようだ。
アート、とか、アートによる表現、みたいな概念が存在することはじゅうぶん承知していただろう。それなら、自分がやっていることがアートであり、自分がアーティストだと考えるのが自然なことだ。
アーティストだと自覚してる人を、アウトサイダー呼ばわりしちゃうのか。
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ダーガーは、全然引きこもりでもないし、社会と没交渉だった人じゃない。
ちゃんと外で働いて自分の稼ぎでメシを食べているし、(拾い物だったかもしれないけど)大量の新聞や雑誌を丹念に読んで、世の中の動きにも目を配っている。
単に、独り者だったってだけじゃん。そんなら、今のぼくの境遇と大して違わないよ。
えらく違うのは、こっちは仕事から帰って毎晩怠惰にお酒を飲んでばかりいるのに、ダーガーときたら、肉体労働の後で、膨大な文章を書いて、絵を描いて、いったいその衝動はどこから来るんだろうと思う。
しかも、本当に、他の誰にも見せるつもりもなく? それが信じがたい。
物語はタイプライターで清書し、製本までしていた。絵も丁寧に保管されていた。
それに、日記どころか自伝まで残しているというでしょう。それってかなり自意識過剰な人じゃないですか。そもそも、他人に見せるつもりのない日記などあるんだろうかと思う。
誰にも見せるつもりもなく、誰かに売るつもりもなく、誰かに発見されることも期待せず、ただひたすら文章を書き、絵を描く。一方で、これが「作品」であり、自分が「アーティスト」であると自覚している。
そんな人、いるんだろうか????
いや、いたんだ。それが、ヘンリー・ダーガーだ、ということなのか。
詩人になるには、自称詩人以外の要件ってあるんだろうか。
とすれば、自分がアーティストだと思えば、アーティストなんじゃない。
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愚問その1:ダーガーは、お酒は飲まなかったんですかね?
愚問その2:ダーガーは、風俗には行かなかったんですかね?
そしてわたしは、夜の街に消えていく。
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「ヘンリー・ダーガー 少女たちの戦いの物語―夢の楽園」展
会場: 原美術館
スケジュール: 2007年04月14日 ~ 2007年07月16日
住所: 〒140-0001 東京都品川区北品川4-7-25
電話: 03-3445-0651

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