客を見送る歌之助師

桂歌之助師の落語会に行ってきた。場所はお江戸日本橋亭。
新歌之助師の高座を見るのは三度目。最初は襲名前に、去年の「京の噺家桂米二です」で。このときの姿が印象に残って、今年3月の内幸町ホールでの襲名披露にも出かけた。
この「桂歌之助上京」という会、Vol.9というから、東京での独演会も定期的にやってたんだね。知らなかった。経歴を見ると、千葉大学の出身というから、東京にもゆかりがないわけじゃないんだ。
開演10分程前に着くと、会場はすでにほぼ満員。ようやく後方の壁際のパイプ椅子に腰を下ろした。といっても、ここはそれほど大きな場所ではないが、それでも100人程は入っていたか。


* * *
柳亭こみち「湯屋番」
NHKの朝ドラ「ちりとてちん」の話題から。
女性の噺家の少ない理由として3点挙げる。曰く、修行期間で年をとる、高座で上目遣いができない、小じわができやすい、とのこと。
歌之助「野崎詣り」
今年1月の襲名披露のエピソード。ある落語会の後で米朝師匠から襲名を薦められたが当の米朝師がそのことをすっかり忘れて「あせらんでもいい」などと言い出し、襲名が1年ほど遅れたこと(これは前にも聞いたな)。
ワッハホールでの襲名披露公演で口上に出演予定の米朝師が現れず、楽屋の隣の部屋で他の出演者たちが司会者や口上の代役を誰にするかと相談しているのを漏れ聞く新歌之助師。三人目の出番まで始まっていたところで通りがかりの(?)団朝師が米朝宅まで迎えにいって間に合ったが(本当?)、本人は今日のことを聞いていなかった(?)とか。
結構、米朝師がいじられキャラなのが可笑しい。落語の上手い尼崎に住んでる人。
最近の大阪での大きなイベントといえば世界陸上。織田裕二と中井美穂の会話がかみ合わない、そこからケンカの話題になったのかな・・・。で、野崎詣りに。
しかし襲名って、手ぬぐいや扇子のデザインやら素材から、襲名披露に誰に出てもらうかやら、まず襲名の挨拶を誰から先に行くかとか、いろいろ気を使うことがあって大変そう。
野崎詣りを聞くのは、多分初めて。ふと、この前サントリー美術館で見た「四天王寺住吉大社図屏風」の賑わいを思い出す。江戸時代の大坂の参詣の様子が髣髴する。あと、「ぞよぞん」って言葉、知らなかった。勉強。
ここで仲入り。
07-10-07_1439.jpg
柳家喬太郎「時そば」
喬太郎師はこの会には8、9年前に一度出演したことがあるそうだ。
曰く、歌之助の襲名を心の底から喜べないところもある。え?と思わせてから、それは先代が若くして亡くなったということだから、と続ける。なるほど。先代より大きな名前にしてほしい、云々と、ちょっとしみじみとした気分になったところで、舞台袖を見ながら「こんなところでよろしいでしょうか」と落とす。
池袋駅頭で見た、ふくろ祭りのよさこい踊り。暴走族みたい、なんて言っちゃいけない。けどやっぱり暴走族。
昨日は入船亭扇辰師との二人会で、ゆうべは久しぶりにお酒を飲んだそうだ。酒を飲んだあとはそばやラーメンが食べたくなる。が、ときにはカレーライスを食べたくなることもある。で、想定外のカレーライスを受け入れる胃の立場を演じる。
そばといっても立ち食いそばが好き、柳家だから(ここで笑い)。古今亭はそば屋で板わさと焼きのりなどを頼みつつ、とろとろと飲む。ビールは小瓶。お銚子2、3本、最後に盛り。一方、柳家はまず「親子と盛り」。お酒のつまみもカツ煮とか。
このくだりで「本寸法」って言葉使ってなかった? 勉強。
そして、立ち食いのコロッケそばに入れられるコロッケの立場を演じる。
その間におととい始まったウルトラセブンXへの異論を挟む。
まくらでさんざん笑わせてから、時そば。この暖かい日にあえて時そばを持ってきたのは、柳家のお家芸だからということですか。すごく本格的なんですけど、一文かすめとる様子を一言一句違わず反芻して、俺もよく覚えてるな、とか、ちょっと引いた視線が可笑しい。あと、あのまずいそば屋は二代目だったんだ。不景気の時代にあんなにまずくても儲かってしょうがない、ってのも、やっぱり初期投資がいらなくて顧客の基盤がしっかりしているってのは得だね。
歌之助「ねずみ」
喬太郎師が笑いを持っていきすぎたか。こちらも幾分笑い疲れた。
気分が高揚しているところに、すぐさま始まった感が強くて、ちょっと落ち着かなかった。休憩が入るとか、まくらを長くするとかすれば、もう少し違った気分だったかも。
「ねずみ」は東京の噺家さんでは何度か聞いたことがあるけれど、上方の人が演じると、舞台は備前岡山池田公のご城下になるんだ。噺のストーリーは、だいたい同じだったかな?
終演後、三越前から地下鉄に乗ろうとしたら、ホームで着物姿のこみちさんが電車を待っていた。案外、小柄な人なんだ。次の仕事に向かうのかな?
* * *
桂歌之助上京Vol.9
会場: お江戸日本橋亭
スケジュール: 2007年10月7日 13:30〜16:00
住所: 〒103-0023 中央区日本橋本町3-1-6 日本橋永谷ビル1F
電話: 03-3245-1278

コメントを残す