名残惜しくってワンダーサイトにもう一度来てしまった。今日が会期の最終日なのだ。
本当にこの作家にはヤラレタ。雨宮庸介という名前を覚えよう。
小さな入口から腰をかがめて展示室の中に飛び込み、顔を起こして左右を見回し、「順路」という案内板につられて左側の部屋から先に見る。
そこはリンゴも溶ける世界だった。まるでダリの絵画の中に入り込んだかというような部屋に迷い込む。


鏡の向こう側でえんえんと繰り広げられる芝居の舞台は鏡のこちら側だ。
ベンチに腰かけ、鏡の中の部屋がまさにこの部屋であることを確認し、そのときこの場所にいたはずの鏡の中の登場人物たち、すなわち、赤い布をまとった裸体の女性、もう一体の張りぼての蛙、作家本人、作家本人に撲殺される女性、などのありえた姿を想像する。
こちら側の役者は逃げ出し、時間は止まったか。
いや、こちら側の芝居は継続中なのだ。すなわち、こちら側の役者はこの私たちにほかならない。
こちらの世界で芝居が継続中であるならば、向こうの世界でも芝居は継続中なのだ。鏡を境にした相似形と相違形とがある。
そのとき、隣の部屋では白いシャツを着た作家がコンクリートの床にうつぶせになり、背中にリンゴを載せ、そのままの姿勢でシャツを脱ごうとしているのだった。
正面の楕円形の画面では、今まさに白いシャツを着た作家がコンクリートの床にうつぶせになり、背中にリンゴを載せている。

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