《S/N》からのモノローグ
“I dream . . . my gender will disappear.”
さっきからホモセクシュアルとヘテロセクシュアルの境界について考えている。
誤解を恐れずに言えば、今のぼくは、その二つのどちらでもないのでないか。
少なくとも、そのようなレッテル貼りは無効であると思う。
というのは、今のぼくには、ステディなパートナーがいないのだから。
ひとつの愛が、常に新たな発見であり、発明であるような愛を夢想するのだが。


ぼくは誰のことも好きではないのに、誰かを好きにならなければならないというのは苦痛なことだ。
人類すべてを愛することが、誰も愛していないことと同じなら、その逆もまた真だろう。
誰かを愛しながら、誰もを愛するのは不可能なことなのだろうか。
ここに至って、ぼくも、ぼく自身の愛を発明しなければならないことになった。
ぼくは夢想する。すべての二項対立が消滅することを。
ぼくがあなたであり、あなたがぼくであり、そのどちらでもない。そのどちらでもある。
I dream . . . I . . . will disapear.
それは、互いの腕にナイフを突き立てて、血と血を交換することから始まる。
愛が死であり、死が愛であり、そのどちらでもない。そのどちらでもある。
漠然とでも、未来には何がしかの希望が残されているということを、今にして思えば、無自覚に信じていたような気がする。ぼくも、あなたも。
その時点において、すでに希望は極限まで剥ぎ取られていた。そう考えていた。
実際には、そこからさらに、幾重にも希望は剥ぎ取られていったのだが。
それは、未来への一縷の望みを信じられる程度の、絶望だったのだ。
と、すれば、今の絶望も、絶望の身振りにしか過ぎないのだろうか。
ここから先にあるのは、更なる絶望の無間地獄か、それとも、まさにこの今が、決して希望に転化されることのない、完全な絶望なのか。
おそらく、前者なのだろう。
目の前を、救命ボートに乗った古橋悌二が、「アマポーラ」を歌いながら脱出する。
「愛という言葉を使わせて!」
* * *
ダムタイプ 「S/N」特別上映
会場: NTTインターコミュニケーション・センター
スケジュール: 2008年09月06日 ~ 2008年09月21日
住所: 〒163-1404 東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー4階
電話: 0120-144199

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