浦山のお寺でライブがあるというので出かけた。
・・・こう書き出しても、読む人には浦山が分からないか。要するに、黒部の市街地から車や電車で宇奈月温泉方面に向かうと、途中にそういう名前の村があるのですよ。行政の区分では、旧宇奈月町のとばくちあたりになる。
かく言うぼくだって、黒部市に生を受けて30ウン年になりますが、まあ、その後半は故郷に不義理を重ねてばかりでありますが、ともあれ、生まれてこのかた、浦山のあたりは通り過ぎるばかりで、一度も立ち寄ったことがなかった。まあ、普通そうですよね。あのへんに家がある人でもなければ。


この調子で続けていると、話がいくらでも長くなりそうなので、エイヤっと端折りますよ。とにかく、浦山の善巧寺というお寺に出かけた次第です。ライブ会場はこの寺のお堂。
開場が5時半だというから、余裕をかまして5時過ぎに現地に着いたのだが、受付で貰った整理番号札が70番で、おいおい、もうそんなに客が来ているのかよと思った。
開場の時点では、境内に100人くらいは並んでいたんじゃないかな。中に入って開演を待つうちに、あっという間に広いお堂がお客で満杯になった。
失礼ながら、これほどお客さんが集まるとは、まったく予期していなかった。しかも、そのほとんどが若い人たち。だいたい、黒部や宇奈月にこんなにたくさん若者がいたのか?ってくらい。
実際には、富山県外からのお客さんが3~4割を占めるそうだが、逆に言うと、それだけ集客力があるってことだよね。
6時開演。サワサキヨシヒロのDJでストロングマシン2号が踊る。ストロングマシン1号2号は、去年の年末の「Harajuku Performance +」で見た。そのときの覚え書きは、してないかもしれないな。
しかしね。こうやって何事もないように書いてますが、ここ、黒部ですよ。東京のダンス・イベントで見た人のパフォーマンスを、ほとんど時差なしに黒部で見られるなんて、ちょっと凄くないですか?
小島麻由美。青い浴衣に赤い帯をきりりと締めて、キーボード弾き語りで歌う。弾き語りは初めてだって言ってたね。最初、キーボードの音がディレイになっていたりして(テクノ仕様?)。
プロフィール見たら、結構ベテランさんなんですね。すいません、知りませんでした。雰囲気的には、コシミハル的な感じ? あれほどではないか(ってどれほどだ)。
それにしても、熱狂的なファンが集まっているのに驚く。アカペラで歌う曲を会場から募ったら、次から次に曲目が挙がる挙がる。
ちょっといかがなものかな、と思ったのは、彼女の出番が終わったところで帰る客が結構目に付いたこと。ぼくの周りの席もごそっと抜けていた。それってありえますか?
サワサキヨシヒロとサックスのテディ熊谷。冒頭、サワサキ氏が立てかけたベースをビヨーンと鳴らしているあたりは、ちょっとごちゃごちゃした感じだなあと思って聞いていたが、音数が少なくなって、だんだん良くなってきた。まさに温泉チルアウトか。ちなみにこの二人は小川温泉元湯に前泊してたとか?
お手洗いに席を外しているうちに、ストロングマシン1号2号のパフォーマンスが始まっていた。今度は父親の1号と絡む。
七尾旅人と石橋英子。この二人もほとんど知らないのだが、七尾旅人は、world’s end girlfriendのアルバムにゲスト参加しているのは聞いている。生で見るのは初めて。
まあ、なんて言えばいいんでしょうね。自由自在というか、野放図というか、破天荒というか、人を食ったようなというか。こういう人だったのか。ちょっとびっくりしました。
が、シンガーソングライターなどという、ひと昔もふた昔も前のような肩書きを、現在進行形で背負うと、こうなるのだろうか、とも思った。「この素晴らしき世界」の演出、よくやるなあ。
すべての出演者の出番が終わって、最後の最後は、読経。
今回のパフォーマンス全体にいえることだが、照明が効果を上げている。お堂の中の装飾とあいまって、時に陰影を浮き立たせ、あるいは色彩を明らかにし、幻惑的な雰囲気を出している。その間も、中央のご本尊はあたたかく輝き続けている。
昔だったら、お寺に集う者は蝋燭一本の明かりでも幻惑されたことだろう。が、イリュージョンに溢れたこのご時勢には、このような照明効果の力添えもあってしかるべきだろう。お葬式のときに回転灯がくるくる回りますね。方向性としてはあれと同じ流れだと思うけど、もはやあの程度の幻惑では物足りない。
最初、出演者の顔ぶれを見て、ここに地元のバンドとかパフォーマーが絡んでもいいんじゃないかな、と思っていた。今回の出演者は、みんな「旅の人」ですから(そういや、七尾旅人はまさに「旅の人」だね)。
ホワイトキューブから離れたイベントでは、できることなら、その土地に染み付いた声を聞きたい。土地が語る物語を読みたい。
ここ黒部に、そんな声が聞こえるだろうか。語るべき物語などあるのだろうか。今や、どこか上のほうから降ってくる言葉ばかりではないか・・・。
が、最後の読経に至って、気がついた。そうか、これがあったか、と。
* * *
お寺座LIVE vol.3
会場: 白雪山善巧寺 本堂
スケジュール: 2008年09月20日 18:00~
住所: 〒938-0862 富山県黒部市宇奈月町浦山497

“浦山から” への1件の返信

  1. お寺座ライブ・善巧寺の雪山です。
    文章を読ませてもらい、思わず唸ってしまったのでコメントさせていただきます。
    まず、貴重なレポを心より感謝いたします。照明効果に関しても嬉しい限りのお言葉です。
    地元の音楽家に関しては、以前から考えておりました。せっかく県外からもたくさんお客さんが来られるので、この方たちならば、というアーティストがおられたら出演依頼をさせてもらいたいと思っています。
    ただ、やはりキーは、貴殿の末尾の言葉に象徴されるがごとくです。
     そんな声が聞こえるだろうか。語るべき物語などあるのだ
     ろうか。今や、どこか上のほうから降ってくる言葉ばかり
     ではないか・・・
    うまい方はたくさんおられるのですが…。
    これは、ぼく自身のリサーチ不足も多分にあるので、今後素晴らしい地元アーティストとの出会いを求めて、いろいろ足を運びたい所存です。また一方で、地方という枠以外に、お寺・仏教界という枠組みの中で紹介したいアーティストもいます。(昨年の二階堂和美さんやおまけびとなど)
    1回の出演者が3,4組のみに限られたイベントではありますが、このあたりは慎重に今後も検討していきたいと思っています。
    今後ともアドバイスがありましたら、よろしくお願い致します。
    どうもありがとうございました。

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