トレースって、物体のトレースと時間のトレースと両方あるんじゃないかなと思った。物の形をなぞるのと、時の流れをたどるのと。
最初は、もっぱら前者のいわばエロティックな触感に気を取られていたんだけど、古屋誠一の展示を見ていて、ようやく自分の迂濶さに気がついた。そして、そのような見方は他の作家にも当てはまるように思った。
うまく言えそうにないけど、写真というものを、今まで自分が考えていたのと違うやり方で総合できそうな気がしてきた。


古橋悌二のビデオ・インスタレーションは、広い部屋の中央に投影機のあるだけののっぺりとした空間なのに、まるで迷路みたいな感じがする。そこには一枚の仕切りもないのに。
それは、四方の壁に映る人の裸身に、あるいはその裸身同士が、触れられそうで触れられない、重なりあいそうで完全には重なりあえない感覚が、迷路の中の壁の向こうに相手を見るもどかしさと通底しているように感じられたからかも知れない。
それにしても、不意に床面に円を描く文字列は、その言葉のまま受け取ってよいのか、それとも何かそれ以上の含意があるのか。
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「トレース・エレメンツ -日豪の写真メディアにおける精神と記憶」展
会場: 東京オペラシティ アートギャラリー
スケジュール: 2008年07月19日 ~ 2008年10月13日
住所: 〒163-1403 東京都新宿区西新宿 3-20-2
電話: 03-5353-0756 ファックス: 03-5353-0776

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