落語の柳家三三、講談の神田山陽、そして狂言の茂山宗彦。
それぞれのジャンルから、当代若手の人気者が集まった。
出演者個々の名前には大いに惹かれるが、いざ三人が寄り集まって、できあがった舞台が面白いかどうかは、また別の話。
個人的には、やや微妙。
舞台の上の展開に乗れないまま、だんだんと瞼がくっついてきて、それに抗っているうちに時間となってしまった。


今回の公演は、出演者の三人が互いの持ち芸をシャッフルして披露するという趣向で、三人が舞台の上で三すくみの関係になるところに企画の妙味があるのだろう。ただ、実際のところ、バランスとしては、どちらかというと狂言の上に落語と講談が乗っかる感じだったか。
というのは、それだけ、狂言という名前は、他の芸能にとって、大きくて重たいのだろう。カーテンコール(?)でのトークでもそんな話が出ていたが、いくら狂言の側が同じお笑いと思ってほしくても、落語や講談のほうが身構えてしまうようだ。
それならそれで、まず狂言をメインにどんと据えたうえで、その牙城を落語と講談の二人がゲリラ的に崩していく・・・というほうが、ある意味では、すっきりした構成になったのではないかと思うのだけど、どうだろう。
休憩後の山陽さんと三三さんの演目は、別に新作じゃなくてもよかったのにと思う。持ち時間の制限もあるのだろうが、どちらも聞いていて消化不良感が残った。それに、二人が新作を掛けるのなら、狂言だって新作を出さないとアンフェアというものじゃないかな?
山陽さんの新作は、話の中の世界になんとか入れたと思ったら唐突に切れてしまった感じで、もし時間のせいでああいう終わらせ方になるのなら、時事ネタの、あるいはマニアックなくすぐりで、あちこち途中下車することはなかったんじゃないかと思うくらいだ。休憩前に、講談の「切れ場」についてしっかり前振りをしていたのに、自分のネタはこんな切れ方でいいのかなと思う。
三三さんは古典落語の人と勝手に思い込んでいたので、新作というだけでなんだかピンとこなかった。噺のまくらで、新作も古典も面白ければこだわらないというようなことを言っていたけど、普段から新作を高座に掛けることもあるのかな? もしそうだとすれば、ぼくの見方のほうが凝り固まっていることになるのだろうが、正直言って、あの噺だったら、むしろ古典を聞きたかったという思いもある。
茂山宗彦さんは、ちゃんと「そーこーぬーけーに」をやってくれました。サービス精神ですね。宗彦さんの落語は「ちりとてちん」でのベースがあるから、それだけでも、あとの二人にとってはハンディキャップマッチだったのでは。
三つの古典芸能を重ね合わせて、芸の遺伝子を組み替えて見せるのは意欲的な企画だと思うし、特に、前半のリレー形式での高座は、舞台構成もあいまって面白い試みだった。
ただ、申し訳ないのだけど、ぼくにはちょっと、息が合わなかったようだ。
あるいは、見ているこちらが、もう少し茂山狂言の話法や文法に親しみがあれば、また違う感想を抱いていたかも知れない。ほかのお客さんは、どうだったのだろう。
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『三三・山陽・茂山の「壱弐参之笑(ひふみのわらい)」』
会場: すみだトリフォニーホール 大ホール
スケジュール: 2008年10月27日 19:00~
開場 18:30
出演: 柳家三三[落語]、茂山宗彦、茂山茂、茂山童司[狂言]、神田山陽[講談]
住所: 〒130-0013 墨田区錦糸1-2-3
電話: TEL 03-5608-5400

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