スライドには独特のリズムがある。
もっとも、ここで使われていたのが、昔ながらの映写機だったのか、それともPCを使ってそれらしく見せていたのか、それはよくわからない。
ともあれ、写真の一枚一枚が、あの特有の機械音とともに、一定のリズムで遷移していく。
とはいえ、写真を見るわれわれが、いつも同じリズムで追いかけていけるわけではなく、突然目の前に広がったイメージを咀嚼しきれぬうちに、スクリーンに思いを残したまま、無情にも次のスライドに移ることになる。
逆に、次のスライドを待つわずかな時間に、手持ちぶさたな思いをすることもある。
そのズレ。
もうひとつ、今回の上映で気のついたこと。あるいは、わざとやっているのだろうか、スクリーンに移る映像のフォーカスがぼけていたり、あるいは一枚のスライドを映す間に、映像がぼけたり、シャープになったり。
そのゆらぎ。
均等なリズムでスライドが遷移しても、映像のゆらぎで微妙なグルーブ感が生まれる。
あるいは、全体の構成でいうと。
深川の街をなめるように始まって、門仲天井ホールにのぼりつめ、ここでひとつのピークがあって、それは、多分ファム・ファタールとの出会い。
彼女に導かれるように、舞鶴に至る、ロード・ムービー的展開。
彼女の手首のふたつのリング。
スライドのリズムが乱れ、鼓動が速くなる。
不意に、目の前に彼女が現れる。スクリーンを飛び出して。深川から舞鶴、そして再び舞鶴へと、円環をつなぎにやってきた、トリックスターのように。
なまなましい、ねっとりとした深川の空気が闖入する。
彼女のリングと物語のリング。
スライドのリズムとピアノのリズム。
夏のにおい。
夏休みは途方もなく長いけれど、気がつくと夢のように過ぎる。
東京に住むぼくにとって、あの舞鶴で過ごした日が(と、仮想現実化してしまうが)夏休みの時間のように流れた。
逆に舞鶴の人が見たら、東京の時間が夏休みだろうか。
ああ、かき氷が食べたくなった。
* * *
『ピアノ&写真コラボレーションコンサート「なつまち」東京公演』
会場: 門仲天井ホール
出演: BABY(向井山朋子+佐内正史)
スケジュール: 2010年07月23日 19:30~20:30
住所: 〒135-0048 東京都江東区門前仲町1-20-3
電話: 03-3641-8275 ファックス: 03-3820-8646
