怠惰に午前中を過ごす。適当なものを作って食べたり。

思い切って午後から外出。今にも雨が落ちてきそう。

曳舟から東武線に。思えば、県境を越えるのはコロナ後初めて。

新越谷駅で降りて、南越谷駅から武蔵野線で南浦和に。ものすごい雨。ホームの屋根の下まで雨のしぶきが入ってきて思わず後ずさり。

京浜東北線に乗り換えて北浦和に。

北浦和駅に着いても雨の勢いは変わらず。公園の緑がすぐそこに見えているので、意を決して歩く。途中で靴下を脱く。

埼玉県立近代美術館に。「写真と映像の物質性」展は今日までの会期。

牧野貴さんという人の映像作品。テレビの砂嵐のような高速で動く粒子が大写しになっている。減光フィルターを片目に当てると、急に粒子の動きが減速するように見えた。そのうち、レイヤーの重なりが見えてきて、それぞれのレイヤーで粒子は動いているようだった。この粒子と見えたものが「揺れる木の葉や水の中を流れる塵など」だったというのは、ハンドアウトを見るまで思いもよらなかった。

横田大輔さんという人の作品。窓のある広い展示室に、大きな透明のシートが重なりながら立てかけられていて、そこでは混濁して明瞭な色と形をなさないイメージが外からの光を透かしている。このどこか不穏なイメージは、作家独自の方法で乳剤から生成されたという。化学反応によって透明フィルム上にイメージが現れる過程は、私の世代にはまさに写真そのものだが、デジタルネイティブの世代にはどう映るのだろうか。

展示室の窓から見える外の人はもう傘を差していない。

Nerholという二人組の作品。遠目にはキャンバスに絵具を厚く重ねたものかと見えたが、近づくと、写真がプリントされた紙を数センチの厚さに重ねて、それをカッターなどで彫り込んだものだった。物質感が先に立って、その物質が何かということまでは考えが至らなかった。思えばこのような技法は、インクジェットプリントに拠らずとも、印画紙でも可能だろう。とはいえ、デジタル以前は、イメージを共有するために紙にプリントすることは必須だったが、デジタル以後は必ずしもそうではない。むしろ、紙へのプリントは過去のメディアに引きずられた行為と言えるかも知れない。デジタル以後の紙を使った写真作品が帯びる意味を思った。

滝沢広さんという人の、ベルリンの地下鉄駅の構内が鏡に写った写真と、引っかいたような線や点が散らばるイメージを組み合わせた作品。後者はキネカリグラフィかと思った。実際は、駅に置かれた鏡の表面をスキャンして得られたイメージだそうだが、キネカリグラフィがフィルムに直接傷をつけてイメージを得るのに対して、媒体をガラス板に置き換えたと考えてもいいのでは。そもそもガラス乾板の写真もあるわけだし。原初的なイメージング装置としての鏡、ということを考えた。

迫鉄平さんという人の作品。作家の目に映るものをスナップ写真のように動画に収めて、それをアーカイブして作品として提示しているというか。作家の周りの風景も既製のイメージもフラットに扱っているように見える。言ってみれば、どうということのない風景やイメージの連続なのだが、そもそも、われわれの生活は、そんなどうということのないものの連続なので、それを衒いなく提示しているとは言えるだろうか。

美術館を出たら青空が顔を覗かせていた。

帰りは京浜東北線で鶯谷に。

駅近くのサウナセンターに寄るか、それとも浅草辺まで歩いて、いつもの銭湯に行こうか迷って、後者に。

その前に、古書ドリスに立ち寄り。店が森下にあった頃は何度か行ったし、遡れば東京に出店する前の徳島時代に通販で本を買ったこともあるけれど、鶯谷に移転してから訪れるのは、実は初めて。食指を動かしていると切りがないから、場所も確かめたし、また来ましょう。

すっかり暗くなった。金美館通りを歩くのも初めてで、よさそうな喫茶店をちらほら見かけたけど、もう店じまいの時間。ぶらぶら歩いているうちに国際通りに突き当たった。ここまで来ればお馴染みの街並み。

ひと風呂浴びて歩き出したら雨。どんどん降りが強くなって、乾いてきたスニーカーが、またぐしょ濡れになりそう。

そこで、これ幸いと、先日散歩の途中にパンフレットをもらったバーで雨やどり。広い店内に相客は年配の男性ひとり。スツールに腰かけて土砂降りの雨を見ていた。

この店は、前は千束通りのコンビニの二階で営業していたのが、7月からこの場所に移ったそう。店名はbookcobar。bookcoverとbarをかけている。天井に届く書架いっぱいの本と店名は関係あるのかと思ったら、特に関係ないのだとか。本は建物のオーナーの建築家の趣味で、お店を経営している若いご夫婦は店子。おかみさんのほうのお父さんが革細工を作っているそうで、革のブックカバーから店名を取ったらしい。

相客はそのお父さんだった。飲んで自転車に乗らないよう娘さんから注意されているのも微笑ましい。お父さんの趣味という寅さんの映画を見ながら、お店のオリジナルブレンドのワインを飲んだ。沢田研二が若い。そうかこの映画がきっかけで田中裕子と結婚したのか。

雨が上がったので、酔わないうちに失礼。ほろ酔い加減で雨上がりの川風に吹かれて歩いた。13,349歩。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。