黒門亭に新年早々、林家錦平さんが出演するというので出掛けてきた。
1日目、息せき切って着いたら、前座はもう終わっていて、入船亭遊一さんの落語が始まったところ。ちなみに、この日の前座は林家たけ平さんだったみたい(名びらが見えた)。
多分、もう1、2分でも早く着いていれば遊一さんも最初から聞けたんだけど、そんな状況だったもので、落語を聞く態勢に入るのが遅れて、あまり集中できないうちに噺が終わってしまった。申し訳ない。ネタは「悋気の独楽」。
さて、その次がいきなり、錦平さんの出番。
某落語情報誌(ってたってひとつしかないが)によると、2日目の錦平さんのネタが「木乃伊取り」って書いてあって、1日目のほうには何にも書いてないから、だったら2日目とは違うネタをやるんだろう、と思って行ったら、この日のネタが「木乃伊取り」。この噺は去年の独演会でも聞いたけど、まあ、コンパクトにまとめたという感じでしょうか。
次、林家時蔵さん。まくらで言ってたけど、この人は両国の育ちで、両国小学校に行ってたんだって。ネタは、なんていうんだろう、「彦六伝」とでもいうのかな。師匠の林家彦六や兄弟子の林家木久蔵師たちをめぐるエピソード。
トリは橘家文左衛門さん。ネタは「芝浜」。8時までに終わらせないと、なんていいつつ、しっかりと演ってくださって、実はぼくは「芝浜」って聞くの初めてで、すっかり引き込まれてしまった。終わったら8時半。
2日目。やっぱり今日も開演時間には間に合わない。ただ、マシだったのは、着いたらまだ前座さんの噺の途中だったこと。この日の前座は円菊師匠の弟子、古今亭菊六さん。ネタは「初天神」の飴を飲み込むくだりまで。
入船亭遊一さんのネタは「権助魚」。田舎者の飯炊きの権助が出てくるわけだけど、前の日に聞いた錦平さんの「木乃伊取り」の権助とキャラがかぶるから、遊一さんには悪いけれど、やっぱり錦平さんは上手いなあと思う。
ちなみに2日目は全員根多出しということです。
さあ、錦平さん。今日のネタは「柳田格之進」。
たまたま、年末に部屋の片付けなどしながら、前にビデオに録画しておいた落語を見ていたら、その中に柳家さん喬さんの演じる「柳田格之進」があって。もう、掃除なんて放り出して、すっかりのめりこんで見てしまった。
そのイメージが強烈だったもので、今日の錦平さんのはどうなのかなと期待していたのだけど、さすがに黒門亭の二人目でやるには時間が足りなさすぎたか。
どうしてもビデオで見たさん喬さんのと比べてしまうのだけど、登場人物のセリフよりも説明が多いというか、あっさりと流した感じで、格之進の実直さや、番頭の嫉妬の感情が、聞いていてずっしりと伝わってこない。
例えば、格之進が切腹を覚悟するまで深く思いつめる必然性がいまいち感じられなかったし、最後に旦那と番頭のかばいあいから格之進の娘と番頭が結ばれるまでの流れがてきぱきと進みすぎて、あれれ、という違和感もあった。
全体に口調も急いていたようで、やはりこれは時間を意識したせいだろうか。
むろん、根多出しだというし、今度、この噺を改めてじっくりと時間をかけて演ってくれる機会があったら、ぜひもう一度聞いてみたい。
(多分、つづく)