池袋演芸場に、こぶ平改メ九代林家正蔵の襲名披露興行を見に行ってきた。
この襲名披露興行、上野鈴本の3月下席を皮切りに、新宿、浅草と続いて、今回の池袋演芸場4月下席でひと区切り。
しばらく続いているから、適当なところで見に行けばいいだろ、と思っているうちに、もう池袋での興行。なんといっても大名跡の世紀の襲名披露、やはり一度は見ておかないと、という思いで、ようやく腰を上げた。


さて、開演が1時からの昼の部、開場時刻の12時半に会場に着いたら、すでに当日券を求める客が長い列を作っている。
いやー。もう少し早く来ればよかったな。案の定、チケット売り場では、立ち見になりますがいいですか、と念を押される。
仕方ないでしょう。明日はちょっと、午後に用事が入ってしまったし、これを見逃すと、もう東京の寄席でお披露目を見る機会を逸する。
ようやくチケットを買って、地下二階の演芸場に入ると、すでに客席は満員。両脇の通路と最後列のその後ろに補助椅子を出しても、まだ客が入りきらない。
押され押されて会場の真ん中、壁を背にするかたちで落ち着いた。
さて開演。
前座は木久蔵門下、ひろ木さん。まじめそうな好青年だ。
続いて、その木久蔵師の息子である、林家きくお。曰く、落語界の二世、三世にはAチームとBチームがあって、Aチームには、今は亡き志ん朝師に、柳家花緑、上方の桂小米朝など。このAチームの特徴は、落語のためなら命も捨てる。
そしてBチームは、きくおさんをはじめとして、林家こぶ平、いっ平兄弟など。このBチームは、バラエティーグループ。特徴は命のためなら落語は捨てる、のだとか。ところが、今回の正蔵襲名で、こぶ平さんがAチームに異動してしまう、なんてことを言っておりましたが。そんなきくおさんのネタは「後生鰻」。
林家種平さん、太神楽の翁家勝丸さん、林家鉄平さんと続いて、新正蔵の弟、林家いっ平さん。
まくらでお兄さんをいじるようなことを言っていると、突然その新正蔵本人が舞台に登場!背後からいっ平を丸めたござでぶっ叩く。さっきはまだ来ていなかったのに、といっ平師。不意の登場に、会場からは「九代目!」「林家!」の掛け声。
この「林家!」って掛け声は、かっこいいすね。
いっ平さんのネタは「紀州」。
春風亭一朝さんの落語を挟んで、林家二楽さんの紙切り。
二楽さんが、いつものように客席に何を切ってほしいか注文を募ると、九代目正蔵という声。今回のお披露目では、結構、この注文は多いんじゃないでしょうか。遠目にはそれなりに似てたような。
続いて、春風亭小朝さんの落語。小朝さんは、今回の正蔵襲名の仕掛け人でしょう。
トリに新正蔵が出演するが、今日のお客さんは寄席の開場からずっと聞いているので、ペース配分を考えないとトリに始まる前に疲れてしまう。正蔵は大ネタを用意しているようなので、トリ前の円蔵、木久蔵両師の高座は適当に気を抜いて聞くように(意訳)、なんていうことを小朝師。
かく言う小朝師も、古典のネタではなく、居酒屋に入った一見の客と主人のカウンター越しの会話をさらりと。
しかしこれが、他のどの師匠の古典よりも落語的な感じがして、上手くて面白いんだ。
すでにどこかで酒が入っているらしいカウンターの客が、このごろの音楽の歌詞は何を言っているかよくわからないねえ、と主人に愚痴りながら、浜崎あゆみや平井賢の歌詞を俎上に載せる。小林稔侍とオレンジレンジを取り違えてみせたかと思えば、沖縄出身の歌手といえば仲曽根美樹(誰だ?)しか知らないよと縦横無尽。
最近の歌ネタを出しても、どうしても年齢層が高めの寄席の客にちゃんと分かるようにアピールしている。
なんだか小朝さんの時間だけ、ごく自然に落語の濃度が違うというか、大げさにいうと、ほかと別の次元の空間になっているような、そんな感じがして唸った。
ここで仲入り、私の話もいったん休憩します。

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