立川こしらの落語会「Cafe la Cugo」に行ってきた。
この会は、谷中にある喫茶店「谷中カフェ」で毎月1回開催されているもので、これで8回目だそうだが、ぼくは今回が初めてだ。
立川こしらは、立川志らく門下の二つ目で、ということは談志の孫弟子になるわけだが、東京かわら版の「寄席演芸年鑑」によると、1975年生まれ。本人が噺のまくらで言っていたが、6年間の弟子修行を経て、二つ目に昇進して2年になるという。
立川流の噺家さんは、落語協会や芸術協会の人と違って、末広亭や浅草演芸ホールといった寄席には出てこないから(出られないから?)、ぼくはあまり見たことがない。この立川こしらという人も、どんな人だか全然知らなかったが、まあ世評高い志らくさんの弟子なら大丈夫だろうというつもりで出かけた(と書いたが、実は志らくさんの噺も聞いたことがない)。
さて、こしらさんを見るのが初めてなら、会場の谷中カフェというところも初めてで、行ってみると、これがなんとまあかわいい喫茶店なのだ。
かわいい、というのは、キュート、というのも少しあるけれど、とにかく小さい店で、通り沿いにあっても注意して歩かないと見逃してしまいそうなくらい間口も狭い。1階には小さな木のテーブルが三つほどあるだけで、全部で7、8人くらいしか座れないんじゃないかな。
最初、店に入って、こんな小さな店のどこで落語会などやるんだろうかと思った。
店の人に聞くと、2階が会場だという。そうか、それなら安心した。
1階でしばらくコーヒーなど飲んで時間をつぶし(余談だが、ここでコーヒーを注文すると、ミルクが普通の牛乳と豆乳のどちらがいいか聞かれる。勢いで豆乳を頼んだけど、うーん、次回は普通のミルクがいいかも)、開演20分ほど前になったので2階に上がった。
すると、まあ、2階は2階でやはり狭い。そうねえ、せいぜい6畳くらいなものか。
それでも、板敷きに座布団に座って見るから、ちゃんと詰めれば15、6人程度は座れそう。
正面に木箱を二つくらい並べたくらいの演台がしつらえてあって、こしらさんはそこに座って落語をするようだ。
開演が近づくにつれて、意外にも、と言ったら失礼だけど、客席はほぼ埋まってくる。まあ、満員といっても、さっき言ったように15、6人くらいのものだけど。
他のお客さんの会話をちょっと聞くと、お互い顔見知りの人も何人かいて、この会の常連さんも結構いるようだ。
自家製のピクルスをつまみながらビールを飲んで開演を待つ。
午後6時に開演。最初、事務所の人?の前説があって、その後でこしらさんが赤い着物姿で登場。着物を着ているほかは、いま風の若い人という感じだ。インターネットオークションや自分のこれまでのバイトの話などをまくらにして、落語に入る。演目は「あくび指南」。
まずここで、ちゃんと古典をやっているということに感心する。途中、ちょっと危なげなところもないではなかったけど、何よりも面白い。客いじりも適度、かつツボをついていて好ましい。
ここで休憩。今度は黒糖焼酎をロックで頼む。誰かの差し入れのどら焼きが配られる。
さて、休憩後の演目は「宮戸川」。この人はガンダム好きらしいのだけど、そういう細かいネタを挟み込んだりしつつ笑いを取っていく。
そして終演。期待していたより全然よかった。会場の雰囲気もいいし、こしらさんがちゃんと古典落語をやって、その上で自分の笑いを取っているのがいい。それに、お酒も飲めるしね。
今回改めて感じたのだが、二つ目さんくらいだと、まず古典落語を中心にして、その中に自分流の笑いを入れ込んでいくというほうが、聞いていて快い。例えば、新宿末広亭の深夜寄席でも二つ目さんの噺を聞く機会があるが、時折、自作の新作が余りにひとりよがりに聞こえることがあって、笑うよりも先に、落語というのは果たしてこういうものだったかと客席で考えさせられてしまうことさえあるのだ。
ともあれ、場所にしても噺家さんにしても、新しい魅力を発見した一日だった。