前回のお話の続き。
ということで、ラピュタ阿佐ヶ谷の春原政久監督作品特集、上映スケジュールをチェックして、小沢さんが出演している作品を狙って見に行くことにした。
まず今回は、「おヤエのママさん女中」、「おヤエの家つき女中」そして「大当り百発百中」の三本を続けて見る。なに、三本といっても、どの作品も上映時間は60分前後だから、続けて見たって大したことはない。


最近の売れてる映画をそんなに見ているわけじゃないから、確かなことは言えないけれど、60分という時間はずいぶん短いと思われるのではないだろうか。ぼくだって、さあ、これから映画を見に行こうとなると、2時間くらいはつぶれるのかなと思う。
が、当時の日本映画は三本立ての上映が一般的で、そのうちの一本はこのような上映時間が短い(そして予算も少なめの)作品になることが多かったのだという。
しかし、こんな中途半端な長さじゃテレビで放映するときに時間が余って仕方ないですね。
なーんて思うのは、映画はテレビのナントカ洋画劇場で見るものという先入観があるからだろうな。そんな頭がなければ、もっといろんな長さの映画があっていいはずだし、また映画の草創期にはいろんな実験があったんじゃないかなと思う。よくは知らないけど。
せっかくなので、それぞれの作品の覚書をしておこうと思う。上に書いた順番と違うけど、最初は「大当り百発百中」から。これは小沢昭一主演作品ですぞ。
小沢さん扮する及川太郎はレコード会社の文芸部に勤める作詞家ですが、本人は詩人きどりなのですね。自分の書く詞にかなりプライドを持っている。
映画の冒頭、田代みどりが及川作詞の曲をレコーディングしている場面。当時は今みたいにヴォーカルとバックトラックを分けて録音とかしませんから、スタジオにフルバンドを入れて、歌と一緒に一発録音。ところがスタジオにかけつけた及川がレコーディングの様子をチェックすると、田代みどりの歌っているのは自分の書いた詞とちょっと違う。
「私のハートはローマンチックに揺れている」じゃなくて「私のおしりはローマンチックに揺れている」だ!
というわけで、レコーディング中のスタジオに乱入する及川、おかげで30何テイク目でようやく上手くいきそうだった録音がオジャン、というくらいに、自分の詞にコダワリを持っているのですね。ま、コダワリったって、そんな程度ですが。
さて、この及川さん、すぐにもう1曲の歌詞を書き上げなければならない。それなのに肝腎の詞がなかなかヒラメカないのですね。部長からはしつこく締め切りを迫られる。
詞はヒラメカないけど、この人、独特の才能がありまして、通勤バスの車中のヒマつぶしの競馬の予想はいつも大当り。百発百中のヒラメキなのですね。ただし自分では馬券は絶対買わない。競馬の予想も詩のようなものだ、なんてうそぶいて、純粋に勝ち馬を当てるスリルだけを味わっているというヘンな人なのです。
ところが、その才能がひょんなことからヤクザの一味に目をつけられたから大変だ。
加藤武(小沢さんの旧友だ)扮するヤクザの兄貴・白井は、レース開催日には子分達とバーに陣取り、日がな予想に精出しているけど、いつも大ハズレ。自分の女に写真のモデルをさせて、そのギャラを貢がせている始末。
そこで、及川を監禁してレースの予想をさせようというヤクザ一味と、新婚の奥さん(松原智恵子)のもとに帰りたい及川のドタバタの追いかけっこ。問題の第10レースの発走は刻一刻と迫りつつある・・・。
と、まあこんな感じのお話なのですが、残念ながら今日のところは時間切れ。この続きは、また明日のこころだァー!

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