ごちそうさま

ある友人(居酒屋マニアではない)に連れられて中野で飲んだ。初めて入る店。
店の入口で、バイトらしい若い店員が、靴を脱いで玄関のロッカーに入れるように言うので、ちょっと腰が引けた。こういうのはチェーン店系の大型店でよくある作りじゃないだろうか。
玄関は狭く、すぐ目の前が階段なので、あまり店の中は見えない。店員に言われるまま、階段を上がって2階に通された。


おどろいた。畳敷きのお座敷のふすまをとっぱらってできた空間に、二人が差し向かいになれるくらいの大きさのテーブルがいくつか、程よい間隔で置かれている。室内の照明はまぶしからず暗すぎず。
結構いい趣向じゃないか、と思った。このお座敷とは別に、6畳ほどの部屋も2、3間あって、そこにはテーブルと座布団ではなく、ソファーがしつらえてあるようだ。
要するに、古い木造の民家(というにはいささか広すぎるようにも思えたけれど)を一軒丸ごと居酒屋に改造してあるのだ。
そして、そこで魚料理を食べさせるのである。
さすがに中野だけあって、若い客が多いせいか、どれもそんなに高い値段ではない。
メニューを見ると、中には一匹3千いくらのノドグロだの、千いくらのナントカだの、そういうのも載っているけれど、大抵は一品5百円前後。
釣りあなごの天ぷら、鮮魚のあら煮、かれいの煮付けなどを頼んで燗酒を飲んだ。まだ週の真ん中なのに、お酒が進んで困る。友人は何品かお刺身を頼んでいたけれど、こういう料理にしたもののほうがいいね。
学生や若い人たちが、友人同士やカップルで酒を飲むには、いい店じゃないかと思った。どこにでもあるチェーン店の居酒屋よりはずっと気が利いているし、多分、値段はそう違わない。もとの民家のつくりを活かしつつも、そこにソファーを持ち込んだり、紗幕で空間を仕切ったりする演出や、適度な照明が、スカしすぎない、いいセンスを出していた。
ただ、まあ、ひとりじゃあ入りづらいなあ。1階にはカウンター席もあったけれど、わざわざ靴を脱いで上がるのはどうも。

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