某月某日
宮坂さんに呼び出されて秋葉原へ。といっても電気街ではない。
待ち合わせまで少々時間があったので、書泉ブックタワーで小沢さんの新刊「老いらくの花」を購入。目の前の新刊書の棚に何冊も並んでいるのに気がつかなくて、わざわざ店員さんに聞いて恥ずかしい。
1時間余りで用事は終わり、さあ飲みに行こうということになった。
宮坂さんにはどこか目当ての店があるらしいが、そのことにぼくが異論を唱えられるはずもない(なにしろお金を出すのは宮坂さんだから)。
再開発地区に建った巨大なオフィスビルに入った。
こんなビルの中にも飲み屋があるのだろうか。案内図を見ると、2階、3階あたりは確かに飲食街になっている。それで、魚で酒を飲ませるらしい店に腰を落ち着けた。


再開発ビルが建ち、つくばエキスプレスが開通して、秋葉原の人の流れも変わったというが、それでもさすがに休日夜のオフィスビルに人は少ない。この店にしても、われわれ二人の他にお客は誰もいないじゃないの。どう見ても店員さんのほうが多い。これが平日であれば、会社帰りのサラリーマンやOLでいっぱいになるのだろうか。
メニューをめくっていると、海鮮と季節の野菜の串焼き、なるものがある。どんな材料を使っているのか店員に聞くと、その女性はあまり日本語が上手でないようで、厨房との間で伝言ゲームみたいになってしまう。
刺身盛り合わせ、冷や奴(やたら薬味が多い)、もずく酢などを頼んで酒を飲んだ。
地酒が何種類かある中から、宮坂さんが天狗舞を頼むと、ガラスの徳利に2合分入ったのを持ってきた。味オンチの私は、これが天狗舞ですと出されれば、そうですかと飲むしかない。
ところで、こういう店のお酒は、たいてい冷酒と決まっているんですよね・・・。もちろん、冷酒、嫌いじゃないですが。
この前入った神保町のおでん屋さんでお酒を頼んだら、まず「お燗にしますか」と聞かれた。そうかお燗が基本なんだな。それで、冷やでいいです、と答えると、「常温ですか」と聞き返された。
常温ねえ。いや、みんな言ってますけどね、常温って。だから店のおばちゃんもそう聞くしかないんだろうけど。
でも、常温って、なんだか化学の実験みたいでねえ。常温核融合とか。
「冷や」だと冷酒とまぎらわしいのだろうけど、それにしても、誰かもっと粋な言葉を考えてくれないものかと思う。
某月某日
取るものも取りあえず大島に駆けつけて、大衆酒場で飲む。
この店になぎら健壱氏が来るらしいという話を聞いて出かけたわけだが、いやはや、われながら酔狂なことだ。
しかしこの酔狂という言葉、居酒屋ぐるいには、まさにぴったりじゃないですか。
なぎら氏は雑誌の取材。編集者らしい女性、カメラマン、マネージャーが同行。
取材が終わったあとも、なぎら氏はしばし店に留まって一献。
私はビール、チューハイでまぐろ刺身、新ショウガ(またかよ)、豚とモヤシの炒め物。
某ご夫婦、そして某さんもご一緒。適当なところで腰を上げ、場所を変えて飲み直す。
そこでは焼酎の緑茶割り。結構イケル。ゴーヤチャンプルーが旨い。
ヨン様ステッカー、焼酎のノベルティグッズを貰って店を出る。
どうやって帰ろうかと思ったが、ほろよい加減で緑道を歩いているうちに亀戸に抜けた。雨上がりの新緑の中を歩くのは気持ちいい。
某月某日
鈴本演芸場で、林家種平・錦平の二人会。
会がはねてから、程近いアメ横のガード下で一杯。
こんなふうに書くと、いかにも慣れた感じだが、実はそんなにアメ横で飲んだこともないのですよ。
今回の店も初めて入るところ。
カウンターの奥に通されると、なんだか臭う。何の臭いだか分からないが、例えるならナンプラーをさらに腐らせたような臭いだ。
取りあえずそれは嗅がなかったことにして、瓶ビールと煮込みを頼む。
ひと息ついて、店の外にはみ出して飲んでいる人たちを観察する。
最近はクールビズが定着しているし、今日など昼間はかなり暑かったから仕方ないが、みんな白のワイシャツ姿。上着どころか、ネクタイを締めている人もほとんどいない。
さっきの不穏な臭いとあいまって、なんだかここは日本じゃない、どこか別の国のようだ。
一方、私はダークグレーのスーツにタイドアップ。これでは別世界の人ではないですか。
不意に居たたまれなくなって、コップのビールを飲み干して、そそくさとお勘定。
瓶ビール大580円に煮込みが420円で、合計千円ちょうど。絶妙な価格設定だ。
が、正直言って、高いと思う。あと100円か200円か・・・。
まあ、鈴本まで車で来ておいて、100円高いもないのだが。
しかし、さっきの店を出て少し歩くと、ほんのわずかのところに、もっと安くてキレイな立ち飲みがいくつもあるのに気づく。
要するに、あの値段は、アジア風異国情緒を体感するためのエクストラチャージだな。

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