某月某日
ゆうべも飲んだな。部屋飲みだったけど。
お酒を飲んだ翌朝は、近所のスポーツクラブに行って、ぬるい風呂にゆっくりつかり、限りなくボーッとしてから自転車をこぐと、汗がたっぷり出て、酒も抜けていく感じがして、大変によろしい。
その日も、風呂に入って限りなくボーッとしたまではよかった。が、いつもより余計にボーッとしすぎたのか、湯船から降りる階段で足を滑らせてしまい(まさに階段を降りる裸体)、スッテンコロリン、とまではさすがにいかなかったけど、左足のすねと右足のかかとをしたたかぶつけて、そのときはなんともないと思ってたんだけど、気がついたらかかとが切れて血が出ていた。うーむ。
フロントでバンソウコウをもらって、何事もなかったように新聞を読みながら自転車をこぐ。しかし最近そんな話が多いな。
いったんうちに荷物を置いてから、浅草に向かう。今日は隅田川を行く水上バスの中で、ほうほう堂のダンス・パフォーマンスがあるのだ。
ほうほう堂を見るのは二度目だ。去年、東京都写真美術館に「恋よりどきどき」展を見に行ったとき、会場でほうほう堂が踊っていた。小柄な二人が、館内の階段を降りたり登ったり、展示室から出たり入ったり、靴を脱いだり履いたり飛ばしたり、客をいじったり、ベランダみたいなところに登ったりしていた。
水上バスの乗船場へ行く前に、少し足を伸ばして、このあいだチャンポンを食った店に寄ってみる。今日は皿うどん。具はチャンポンと同じだが、とろみをつけてある。それを、パリパリする麺といっしょに、辛子をつけて食べる。ビールを1本。
乗船場に出発10分程前に着くと、すでに出発を待つ客が列をなしている。が、むろん、これはほうほう堂を見に来た人ばかりではない。はとバスとか、何かのパックツアーとか、そういう団体の客が多いようだ。
墨田区民歴も、もう6年になるけれど、水上バスに乗るのは、実はこれが初めて。
過去のアサヒ・アート・フェスティバルでも、何度か水上バスの中でダンス・パフォーマンスが行われていたのだそうだ。知らなかった。というか、知ろうという元気がなかったのだな、今までは。これからは、こういう機会があればなるべく足を運ぼう。これは生まれて以来の大革命。
船に乗り込むランチで、すでに怪しい身振り手振りをした二人組が客をいざなっている。なぜだかなるべく目を合わせないようにしながら乗船。
ほうほう堂のダンスはそれはそれとして、川面から見上げる両国界隈の風景が、思っていた以上に新鮮でいい。観光客を装って外の写真を撮りまくる。
写真を撮ったりダンスを見たりしているうちに、浜離宮、そして竹芝桟橋に着いた。
しかし、船の上であれだけ動いて、ほうほう堂の二人は船酔いしたりしないのかな。私は、酔わなかった。正直いうと、乗船する前はちょっと不安だったけど。でも、まあ、そんなもんだよね。さほど揺れるわけでもないし。
竹芝桟橋でいったん船を下りるとき、偶然ほうほう堂の片割れが隣を歩いていたので、酔わないんですか、なんてトボケたことを聞いてみた。すると、リハーサルで船に乗ったときはフラっとしたこともあったのだとか。あのダンスは決して即興ではなく、シビアな練習に基づいているのだ。
今度は、隅田川を遡行する船に乗る。アートのれん会のツアーの人たちが合流している。
心なしか、ほうほう堂の二人が行きよりも動き回っていた気がするのは、私自身も船の中を動いていたからか。船内の売店で地ビールを買って飲む。
乗客の多くが外の景色を見ているのに、一部の人たちは船の内部を凝視しているという対比が面白い。まあ、ほうほう堂の二人は外を見ている客にも声を掛けて自分たちのダンスに組み込もうとするわけだけど。
さて、浅草まで戻ってきた。時分どきになったので、酒を飲みに行く。
今日は、前に一度だけ入ったことのある、吾妻橋近くのもつ焼き屋にしよう。
ビールで焼き鳥、シロ、ネギ焼き、それからチューハイを2、3杯。
店のおやじさんに「お近くからですか?」と聞かれたので、石原だと答えると、意外に遠くから来たような顔をされた。じゅうぶん近所の範疇だと思っていたのだが。このへんの距離感はそういうなものなのだろうか。
カウンター奥の客が、うな重を食っていて旨そうだ。この店ではそんなものも出すのか。
酔いで自制心が鈍ってるんだな。誘惑に勝てず、結局自分もうな重を頼んでしまう。旨い。旨いが、酔ってるから何を食ってもおんなじだよ。この分は、明らかにカロリーオーバーだ。まあいいや。明日控えりゃいいんだ。