タダ券があるというので、「再考:近代日本の絵画」という企画展を見に、木場の東京都現代美術館に行ってきた。
この企画は、ここ都現美と上野の東京芸大美術館の2館共同で開催しているのだけど、展示の順番からすれば、先に芸大美術館に行ったほうがよかった、ということに、会場に着いてから気づいた。というわけで、最初の展示室に入ると、いきなり第五章になっているという中途半端な状態だったわけです。
この展示室では、昔の芸大出の画家たちが卒業制作で描いた自画像が壁面にずらっと掛けられている。そういえば、3月に見た「MOTアニュアル2004」で、この部屋の同じ壁に北島敬三さんの「PORTRAITS」という写真作品が展示してあったんだけど、この顔の並びっぷりは、何か企画した人が意識したんでしょうか。ある意味、それぞれがお互いの展示の批評みたいになっているような感じもしないでもないですが。
順路をどんどん行くと、今度は明治期の町並みや人々を描いた作品がいろいろ展示してある。
同じ時代に描かれた油彩画と日本画が並んでいるけれど、どうして油絵で描いた日本人の顔とか日本の風景って、あんなに暗くて重苦しいんですか。あるいは社会批判的な意図でも入っているのか?と勘ぐってしまうくらいなんですが。それなのに、隣りの日本画のほうは、明るくて、軽やかだったりする。女の子も結構かわいいし。これだったらこの時代に住んでもいいなあって思うくらいなんだけど、でも油絵のほうの世界には住みたくないなあ。この差はいったい何なんでしょうね。
というようなことを、同行のTさんに話すと、そのころ日本で絵画を教えていた西洋人が、印象派以前の暗い色調のスタイルの人たちだったから、という。
なるほど。日本人が西洋の美術を学ぼうとして呼んだ外国人がひと世代前の人たちで、それに倣って描いた絵があんな暗いものになってしまった。一方、同時期のヨーロッパの美術は、逆に日本の美術に影響を受けて変容していたわけですね。
ところで印象派に影響を与えたのは、正統的な日本画じゃなくて、大衆的な浮世絵のほうですよね。でもこういう展覧会では、日本画はあっても浮世絵は出てこないというのは、やっぱり芸大では浮世絵をやらないからなのかなあ。
この日本画なんて、ちょっとアニメっぽいですよね。セル画っぽいというか。明治に描かれたものなのに、あんまり古さを感じない。こっちの油彩画のほうは、いかにも古臭く見えるのに。日本画とアニメっていうと、村上隆をふと思ったりしますが、実は昔から日本画ってアニメっぽかったんですね。
(たぶん続く)