原美術館に 「アート・スコープ2005/2006」を見に行ってきた。
60〜70年代生まれの日独のアーティスト4名による展覧会。
以下覚え書き。


森弘治氏。静かな緊張感の中にどこかユーモアがただよう映像。
最初の展示室でまず目に入った作品。赤いワインがグラスの隙間から染み出している。グラスの周りに次第に溜まっていくワインの、手前の集合と奥の集合が合体しそうでなかなか合体しない。しばし凝視するうち、ついに赤い二つの山と山が触れ合った瞬間、ぴんと表面張力が底に溜まったワイン全体にみなぎる。一瞬息をのんだ。映像がリピートして、何も入っていないグラス。不意にハンマーが音を立ててつきささる。思わず、あっ、と声を出してしまう。
「ライフ オン/オフ」と題された作品。ネオンサインの「LIFE」という文字が明滅している。入口で配られた解説を見ると「ヴィデオ 60分(ループ)」だって。おいおい1時間えんえんオンオフしてるのかよと思うだけでなんだか可笑しくなってくる。いやいや、人生ってそんなもんかもよと、あえて深読みすれば哲学的な感じがしないでもない。機器のトラブルのために見られない作品があったのが残念。
名和晃平氏。この人のガラスビーズを使った作品、そういや愛知万博で見たぞ。そうかそうかこの人だったか。
「Air Cell」と題された作品。顔をくっつけるくらいに近づけて、視線の角度を変化させながら見ていると、行列する小さな球形の微妙なゆらぎにだんだん眩惑してくる。展示室でどうして靴を脱がせるんだろうと思ったけど、いま思えば、それもホワイトキューブの中でトリップ感、没入感を増幅させていたのか。階段室の平面作品もいい。全体に理知的でクールなんだけど、作家の手わざの跡から情念みたいなものが漏れ出てくるようにも感じた。
ドイツ人2人の作品は、うーん、正直よく分からなかった。日本に滞在して制作したということが、むしろ日本とドイツの間の距離感をきわだたせているように思える。日本的な素材の扱い方も、いかにもガイジンっぽいような感じだし。いくつかの作品からはヨーロッパの奥深さみたいなものを感じないでもなかったけど、こっちはシューマンのこととかよく知らないし。まあ、それはこっちの問題だけども、そもそも、そこからして前置きが要るんだから仕方がない。
前記の日本人作家2名もドイツに滞在していたというけれど、彼らの作品からは、特段ドイツに滞在したからどうこう、というのは感じない。それはこっちが日本人だからなのか。ドイツ人が見たら、また別の感想もあるのだろうか。
「アートスコープ2005/2006」展
会場: 原美術館
スケジュール: 2006年09月09日 〜 2006年10月22日
住所: 〒140-0001 東京都品川区北品川4-7-25
電話: 03-3445-0651
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北品川に来たのだから、以前居酒屋紀行で紹介していた天ぷら屋を覗いてみようか。
入ったことはないが、しばらく前に昼間このあたりを歩いたとき、店の場所は見つけていた。
旧東海道を折れて、あのあたりではなかったか・・・。
あれ、あれれ。店がない。駐車場になっている。いや、この場所で合っているのか?
バス停がまん前にあるから、ここでいいはずだ。
ショック。仕方なく、旧東海道沿いを歩いて、適当な店に入って飲んだ。
ここはここでよかった。煮込みとビール。それから、いわしつみれ煮。結構ボリュームがある。
しかし、あの店が跡形もなく消えているとは・・・。
なにか取り返しのつかないことをしてしまったような、もやもやとした思いが残る。
家に帰って調べてみると、その天ぷら屋は近くに移転して営業は続けているようだ。気がつかなかったな。
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名和氏の作品、愛知万博のときに撮った写真を引っ張り出してきた。
nawa-expo1.JPG nawa-expo2.JPG
小さいから分かりにくいかな? どれも大小のガラスビーズで構成されている。

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