一軒目、北洲でした

目が覚めた。青森のホテルの部屋だ。
時計を見ると、夜中の2時過ぎか。
テレビでは夜回り先生という人がえんえんと語りつづけている。
チャンネルを変えたいのだが、リモコンがどこにも見当たらない。
テレビの脇を見る。ベッドの下を覗き込む。シーツの中をまさぐる。どこにも見当たらない。


例えば、リモコンを持ったまま部屋の外に出て、どこかに置き忘れたまま戻ったか?
あるいは、部屋のドアがロックされていなくて、ぼくが寝込んでいる間に、誰かが忍び込んで、リモコンだけを持って出て行ったか?
そんなわけない。そんなわけない。
とすると、リモコンはどこに消えたのだ。
どこに行ったかはさておき、もしこのままリモコンが出てこなかったら?
黙ってチェックアウトして、後でリモコンがないことが分かったら? 弁償か?
リモコンって、いくらくらいだろう。
というか、いま見当たらないにしても、リモコンは絶対にこの部屋のどこかにあるのだ。だから、弁償させられるということはないはずだ。
では、リモコンはどこに行ったのか?
というようなことを、アルコールの残った頭で、うつらうつらと考えつづけていた。
外が明るくなって、もう一度目が覚めると、リモコンはベッドと壁の隙間に入り込んでいた。いやはや。
おかげで、最初のつもりよりチェックアウトの時間が遅くなった。
最初は、駅前を9時発のバスで青森県立美術館に行こうと思っていたのだけど、ホテルを出たのが9時過ぎ。八甲田丸までよろよろと歩いて、野良ネコに鮭トバをやって写真を撮ったりして時間をつぶした。
10時のバスで美術館に。青森駅に戻ってきたのが3時25分。三内丸山遺跡を見に行く時間はなかった。
3時45分発の特急で秋田に向う。この電車、なんと3両編成。
秋田着は6時17分。ホテルにチェックインして着替えたりしていると、飲みに出るのは7時を回ってしまった。外は雨が降りそう。
* * *
川反通りにある「北洲」。
一瞬入りにくいかなと思うが、中に入ると意外に気安そうな店なので助かる。
実はこの店も居酒屋紀行秋田編の一軒目。こうなったらとことんミーハーで行くぞ。
カウンター席に通される。2脚ずつセットになっているような感じで計6席。私は真ん中。左隣に訳あり風の?カップル。右はひとり飲みの若い男。何かガイドブックを念入りに見ている。夜遊びかな?
まず瓶ビール。芋のこ煮、塩魚汁鍋を頼む。そうかしょっつるというのはこう書くのか。
お通しは浅蜊を煮たもの(だったと思う)。ビールをちびちび飲みながら料理を待つ。見上げると来店した有名人の色紙が並ぶ。私の真上はさだまさしのサイン。番組で太田さんが腰を据えたのは奥に見える座敷だろうか。
芋のこ煮が来る。旨い。鶏で出汁を取っているのか。
地酒の「おためしセット」というのを頼む。両関純米酒「元」、刈穂吟醸酒「六舟」、新政原酒「浥」の三種。

コメントを残す