ちょっとした自己嫌悪に陥りつつ、閉館まで少し時間があったので写真美術館を覗いた。
かく言うぼくは、ダゲレオタイプの何たるかも知らない、と、細江英公展の入口に置いてあったチラシに、氏の文章で「生まれて初めてダゲレオタイプで撮影した・・・」とあるのを見て思う。心臓がとても苦しいので腰をかける。


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「鎌鼬」を見た。
稲刈り後の田に水を張ると、残された稲穂の根元の部分(いま適切な名詞が出てこない)が、幾分かの高さで水面から突き出す。それぞれの田はこのような突起物で埋め尽くされた状態で、ある一定の領域ごとに土地を区画している。ということは、結局のところ見渡す限りの地表は突起物で充満していることになる。そうした、いわば草間彌生的なオブセッションに気を取られているうちに、この突起物ひとつひとつが土方巽本人であったことに気づく。あるいは影であるかもしれない。最早どちらでもよいことだろうが。
片足は地面の上に置かれているようで、実は地中の氷山の一角であった。もう片方はおそらく地面から遊離している。体は透明マントか稲刈り後の水田に似せた迷彩じゅうたんのどちらかで隠されているのだが、両足がそこから突き出ているので、頭隠して尻隠さずの状態になっているのだ。
年端もいかぬ少女を恍惚とさせるノウハウをぼくにも伝授してほしいものだ。彼女の両鼻の穴の広がりは尋常ではないと思う。
稲架木の上の舞踏家は鴉を気取るのだろうか。それにしても稲はどこに行ったのか。あるいはとうに焼かれたか。炎と黒煙とが上空で混合している。
全力疾走しながら旭日旗の旭日部分だけを身体と合一させている。
ふと見ると写真下部には舞踏家の輪郭があり、おそらくその視線はこちらに向かっているのだが、屈むとそれは黒い一帯である。立ち上がって再度輪郭を確認し、再び屈んでそれを消す。この一連の動きをスクワット運動といいます。
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「球体写真二元論:細江英公の世界」展
会場: 東京都写真美術館
スケジュール: 2006年12月14日 〜 2007年01月28日
住所: 〒153-0062 東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
電話: 03-3280-0099 ファックス: 03-3280-0033

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