雨に物思う

ちょっと時間があったので上野の西洋美術館に行って、最終日にもう一度「イタリア・ルネサンスの版画」展を見てきた。
この前見たときは、今回の出展作ではないはずのデューラーの作品に目を奪われてしまって、覚え書きも脇道にそれてばかりだったけど、改めて見ると、ひょっとしてデューラーは例外的な存在なのかも知れないと思った。ということは、そのことばかり強調するのはあまり適切でないような気がしてきた。


むしろ、例えば最初の展示室にあったマンテーニャによる銅版画は、登場人物の表情は感情豊かだし、画面全体に物語的な動きがあふれていて、作品の主題となっている新約聖書や古代神話の情景がこちらまで伝わってくる。そういう作品は見ていて楽しい。
展示室のパネルの説明によると、デューラーはマンテーニャの版画を模作したり、モチーフを自分の作品に引用したりという影響があったそうだ。そして、デューラーの版画に現れる人物や背景が、今度は別の作家の版画の中に引用されていく(ちなみに、この展覧会では、このほかにも版画を媒介にした影響関係を解説したパネルがいくつか用意されていて、ぼくみたいなシロートにも親切な展示になっているのだ)。
それから、前回の覚え書きでは、ライモンディという銅版画家については、デューラーの作品をコピーして訴えられた人ということしか書かなかったけど、第3章の展示を見ると、この人が後年ラファエッロの原画に基づいて作った作品は、デューラーの緻密さに物語の豊かさがあわさったようで、なんだかちょっと、息をのむのだ。前回見たときは、これが同一人物だという認識がないまま漫然と見過ごしていた。
いずれにしても、こんなふうにさまざまな影響関係が行ったり来たりしているのが面白く、またそれを運ぶメディアが版画だったということが、前回の覚え書きの繰り返しになるけれど、この展覧会のテーマであるのですね。
しかし、今回はこのあたりで時間切れ。
改めて思うのは、作品の主題になっている、新約聖書や古典古代の神話の物語を、こちらはよく知らないからなあ。もう少しお勉強していれば、もっとよく楽しめるんだろうけど。あるいは、何かトンチンカンなことを書いているんじゃないかと思うと恥ずかしい。
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「イタリア・ルネサンスの版画」展
会場: 国立西洋美術館
スケジュール: 2007年03月06日 ? 2007年05月06日
住所: 〒110-0007 東京都台東区上野公園7-7
電話: 03-3828-5131 ファックス: 03-3828-5135

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