前から言っているように、ぼくは球団合併や1リーグ制について、決して頭ごなしに反対しているわけではない。反対するよりも何よりも、まず、賛否を冷静に判断するだけの情報が、ぼくのような一ファンには与えられていない。
現行の2リーグ制や球団経営のどこに問題があるのか。問題があるとすれば、どのような解決策が考えられるのか。合併や1リーグ制は、あくまでその解決策のひとつとして検討されるべきであり、決してそれだけが自明な回答であるわけではないだろう。
もっとも、一部の球団オーナーは、そうした議論の経緯が選手やファンに示されていないだけで、われわれの間では問題は既に解決済みだと言いたいのかも知れない。
多くの企業においては、積極的にステークホルダーへの説明責任を果たすべきという考え方が一般的になりつつある、このご時世にである。
まあ、そんなことをこの場で嘆いても仕方がないのだろう。なにしろ、今回のオーナー会議の一方の主役たる球団オーナーが率いる企業グループは、つい先日も総会屋への利益提供事件が明るみになったことで、その閉鎖的で独善的な経営体質が再認識されたばかりだ。
アサヒ・コムの記事で、もう一方の主役、読売の渡辺オーナーの発言が紹介されている。
「『選手会が議論の時間が短すぎるのではと主張しているが』と聞かれると、『100年議論すれば十分だと言うんですか。1年かける必要はない。2カ月あれば十分』。そう答え、『朝日新聞の論調に迎合するような方向に引きずられる必要はひとつもない』と付け加えた」
最後の一文は、これが朝日新聞の記事だからこそ付け加えられているのだろう。
渡辺氏がいうところの朝日新聞の論調がどのようなものか確認することはできなかったが(ソースをご存知ならご教示願いたい)、この問題について朝日が何か論説を出しているのなら、論説には論説をもって反駁することが言論人としてのマナーだろう。
ましてや、この渡辺恒雄という人は、読売新聞の主筆なのである。
それがこんな吐き捨てるような言い方しかできないとは、主筆が聞いて呆れる。
朝日新聞の論調というが、それなら論調があるだけ、朝日は読売よりまだマシだといえる。
もし球団合併が不可避であり、また1リーグ制が日本のプロ野球界にとって有益だというのなら、なぜ読売は、あるいは渡辺恒雄は、自分の筆でそれを訴えないのか。
まがりなりにもペンで飯を食っている者が、自分の言葉で選手やファンを納得させられないでどうするのか。
新聞社としての明確な見解も指針も出さぬまま、いたずらに世論を誘導しておいて、1リーグ制が既成事実化するのを待つというのか。
身内の利益のかかわる問題には口をつぐむというのでは、読売新聞には他の重要問題を論ずる資格はない。
7月9日付の朝日の社説が、渡辺オーナーの「朝日新聞の論調に・・・」発言に触れているね。
(「1リーグ――その前にやることがある」)
さあ、読売新聞はどう応えるのか。
これを黙殺するようだと、読売はホントどうしようもないよ。
たまたまナベツネの講演録&インタビューを見つけたので、リンクを張っておこう。
その中のナベツネの言葉から。
「新聞は新聞社の社論がなければおかしいじゃないですか、尾崎咢堂は27歳で新潟日報の主筆になった。僕はそのことに憧れておって今でも主筆を離さない」
「このままでは、あらゆる意味で日本はだんだん悪くなる。これが心配だから今日ここにおられるような若い皆さんがそういうことに早く気づいて、自分達の手で日本をつくらないとこの日本は滅びるよ。今の政治家、今の権力者に任せておいたら日本は滅びるよという自覚を持って頂きたいと思う。」
まったくそのとおりだね。