15時から田中泯さんのパフォーマンスがあるというので、赤レンガ倉庫に向かう。雨はやや繁くなったが、傘なしでは歩けないほどではない。
リクリット・ティラヴァニャの作品がパフォーマンスの場だという。
予定の時刻の少し前に着いたら、もう3階の廊下に行列ができている。展示室の中はすでに満員とのことで、退室する客で場内に余裕ができ次第、中に入れるのだとか。ということは、もし誰も途中で帰らなかったら、ここに並んでいる甲斐はないということになる。
実際には、開演して程ない頃から、こらえ性のない客がぽつぽつと帰っていったので、しばし待つだけで場内に入ることができた。


舞踏家はグレーのピーコートに耳あてのついた帽子、膝頭に穴の開いた作業ズボン、コートの下は白いシャツといういでたち。どこか、北脇昇の『クォ・ヴァディス』の中の敗残兵を思う。
木の回廊を時間をかけて歩みを進めていく。
ごつごつとして充溢した肉体だと思う。鍛えるために鍛えた肉体ではなく、農民や漁民のように、きわめて実用的な筋肉によって形づくられた肉体だ。か細さや軽やかさという言葉とは遠い場所にあるようでいて、ふしばった手指はやわらかな動きを奏でるようだ。
そのとき、まさにぼくの目の前で、舞踏家の体がくずれおち、荒縄に首をもたれかける。帽子が縄に引っかかって外れる。
そして、ついに円形の舞台に上った舞踏家は、何かに翻弄されるように舞台を歩き回る。あるいは酔いどれた初老の親父だ。
どこかのタイミングで、その翻弄する何かを自分の体に取り込んだように見えた。あるいは、胸のつかえをおろすように、激しく両胸を叩き出した、その時あたりだったのかも知れない。
この場を舞い、踏み固めながら、場所の位相を変換していたとも見える。
最後は舞台に立てられた柱の一本として、あたかも最初からそこに据え付けられていたかのように、作品と一体と化して終わる。
* * *
横浜トリエンナーレ 2008 – 赤レンガ
会場: 横浜赤レンガ倉庫1号館
スケジュール: 2008年09月13日 ~ 2008年11月30日
10:00~18:00 (入場は閉場の1時間前まで)
住所: 〒231-0001 神奈川県横浜市中区新港1ー1
電話: 045-211-1515
田中泯 《場踊り》
日程: 11月9日(日)・24日(月)・30日(日)
概要: 横浜トリエンナーレ2008参加作家によるパフォーマンス。
時間:11月9日(日)15:00頃より
   11月24日(月・祝)15:00頃より
   11月30日(日)15:00頃より
場所:当日メイン3会場でお知らせします。

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